五十肩の鍼灸治療
五十肩について引き続き。
前日は五十肩とそうでない肩関節疾患のいくつかとの判別について説明しました。
さてこれは五十肩、となればそれに応じた治療を行うことができます。
そこで東洋医学的に見た五十肩の病症と、それに対する鍼灸治療について書いてみたいと思います。
五十肩は肩こりや寝違えなどよりも病症が深いです。
肩こりは一時的な過労などで起こりますが、五十肩は加齢という体質の変化が影響しているので、原因を取り除くことが難しいのです。
解剖学的にも筋肉より関節の方がからだの内部にありますので、病変部位そのものへの働きかけも難しくなります。
五十肩の病症
加齢により気血のめぐりが悪くなり、筋や腱、関節への栄養が十分に届かなくなることが原因となります。
現代医学としても、肩関節にかかわる筋、腱、滑液などの萎縮や減少が原因と考えられているので、同じことを言っていると考えてよいと思います。
気血のめぐりが悪くなって起こる病症はいろいろありますが、五十肩のように激しい痛みや運動障害を呈するものはその度合いが激しく、いわゆる「痺病」にあたります。
痺病は特に風・寒・湿邪が合わさって起こり、風邪の影響が強いと風痺、寒邪は痛痺、湿邪は著痺と分けて考えることもあります。
証としても肝虚証、肺虚肝実証(腎虚証に近い)、脾虚証が多くなります。
その上、肩は複数の経絡が通っている場所です。
肺経、大腸経、小腸経、三焦経などがかかわってきていて、どの経絡の流れが阻害されているかによって痛みの出るところや治療ポイントが変わってきます。
五十肩の治療
このように、五十肩は五臓の虚を整える本治法が重要になってくるほか、かかわっている経絡に対する治療、痛みの出ている患部への治療が必要になります。
先に述べた通り、この場合の五臓の虚は過労など一時的な無理が原因ではなく、加齢によるものなのですぐに改善する訳ではありません。
加齢による影響をなるべく減らしていくには、治療に時間を要することになります。
それと並行して、痛みに対する治療をしていきます。
痛みを長引かせないというのが、まずは治療のポイントになるかと考えています。
なんだか難しい感じに書いてしまいましたが、証と治療ポイントが決まれば、治療自体は他の疾患(肩こりとか)とあまり変わりません。
気長に取り組む気持ちがあるとよいですが、1回の治療で痛みが割と和らぐので、体感的にも、気分的にも楽になると思います。
行きつ戻りつして徐々に軽くなっていくようになれば、治療としてはいい感じだなと思います。
痛みがあると気持ちも塞ぎ込みやすくなりがちです。
五十肩でお悩みの方には、鍼灸治療も考えていただければうれしく思います。