押して痛いと、どこか悪い?
鍼灸治療の際、はりを施すために経穴の場所を探して按圧(軽く押す)と、「そこ痛いです…」と言われることがあります。
そして「そこは何か悪いんですか?」と聞かれることもあります。
意外にこの質問に対する答えが難しいのです。
質問した方は足つぼのイメージがあるのかもしれません。
足つぼは、足の裏にからだの臓器や部位が配置され、押すと該当部位が悪いと考えられています。
足つぼと言いますが、耳つぼと同じで反射区を示しているので、鍼灸治療とは別のものになります。
鍼灸治療では、ある経穴を押した時に痛い場合、どこが悪いということはありません。
経穴は敏感なので他の場所より反応がよいため、痛かったり重い感じがしたりすることはあります。
また、経穴の特徴によって反応が現れることがあります。
例えばむくみがある時に水に関係する経穴を押すと、とても痛みを感じることがあるなどです。
そんな時は、むくみがありませんかとか、昨日お酒を飲みませんでしたかなどと聞いたりします。
水の停滞(湿)があるためにその経穴に反応が表れていると考えるからです。
なので、どこかが悪いですよ、という答えは難しいのです。
これは脈も同じです。
治療をする前に証を決めるため、脈の状態を診ます。
手首の脈の指をおいたところの強弱などで肝虚だとか冷えがあるとかを知ることができますが、からだのどこが悪いということまではわからないのですね。
ベテランの先生はたくさんの経験上、腫瘍がありそうだとか糖尿病特有の脈とかがわかるそうなんですが、普通は難しく、また確信はできません。
たまに、悪いところないですか?脈をみてください、と言われることがありますが、からだにどこか悪いところがあるかどうかはお答えできないので、不安があるときはまず検査を受けていただくことをおすすめしています。
経穴の反応も脈状も、たくさんの情報を提供してくれます。
ただそれは病気の発見のための情報ではなくて、治療のための情報なのです。
とはいえ、経穴を押しただけで昨日お酒を飲んだでしょうとか、脈を診ただけで出掛けるときけんかでもしましたか、なんて当てられるとビックリするかもしれませんね。