トイレに行けるって、実は難しい。
こどもの成長のひとつに、ひとりでトイレに行けるようになる、ということがあります。
歩行が可能で、ある程度がまんができ、トイレに行きたい意志を伝えらえるようになれば、トイレトレーニングを始められる時期なのかなと思います。
一般的には2歳前後ですが、1歳半ごろから3歳半ばくらいまでかかる場合もあり、個人差も大きいです。
またトイレに行けるようになってからも、おねしょがなかなか治らないということもあります。
歩いたり、しゃべったり、意志がはっきりしたり、人とコミュニケーションを取ったりと、子どもはどんどん成長していくのに、その割にトイレって発達が遅いですよね。
それはなぜかというと、トイレ、特に小(おしっこ)はとても複雑なしくみでコントロールされているからです。
トイレに行きたいと思うまでの仕組み
尿が膀胱に溜まっていく
膀胱は伸び縮みする筋肉でできています。
腎臓から尿が膀胱に流れて溜まってくると、この筋肉(排尿筋)が緩まって広がります。
それと同時に膀胱の出口の内尿道括約筋が収縮して、尿が漏れないように締めます。
このふたつの筋肉は、下腹神経という交感神経の働きによってコントロールされています。
ある程度溜まったことを認識する
膀胱がある程度広がると、膀胱壁にある伸展を感知する神経受容器が反応して、脊髄の排尿中枢に伝えます。
脊髄の排尿中枢からさらに脳幹(橋)にある排尿中枢に伝わり、その後大脳に伝わることで「トイレに行きたいな」と意識されます。
トイレを我慢する
尿が400mlを超えると排尿中枢からの信号が強まり、強い尿意を感じます。
膀胱と尿道の間の筋肉は自律神経の働きで締まっていますが、尿道の出口にある外尿道括約筋は陰部神経がコントロールしています。
この神経は自律神経ではなく、体制神経、つまり意志でコントロールできる筋肉なので、トイレに行くまで我慢することができます。
トイレに行く
準備ができて、排尿するとなると、その意志が脊髄の排尿中枢に届き、排尿中枢は今度は骨盤神経という副交感神経を刺激して膀胱の筋肉を収縮させるのと同時に内尿道括約筋を緩めます。
膀胱がギュッと縮むのと同時に、膀胱の出口が開いて尿が出ていく訳です。
そして外尿道括約筋を自分の意志で緩めることにより、きちんとトイレで排尿されます。
つまりトイレをスムーズに行うには、
下腹神経(交感神経)
骨盤神経(副交感神経)
陰部神経(体性神経)
排尿中枢(仙髄)
排尿中枢(脳幹)
大脳
排尿筋(膀胱の筋肉)
内尿道括約筋(膀胱の出口を開け閉めする筋肉)
がきちんと働いて初めて実現します。
このどこかが障害されれば、自分の意志通りにトイレをすることができなくなります。
また、自律神経はこころの動きにも敏感に影響を受けるので、心的要因でもトイレコントロールに不具合が出ます。
普段何気なくトイレに行っていますが、その仕組みはとっても複雑なんですね。
東洋医学では、泌尿器関係は「腎」がつかさどっています。
腎は成長と老化という命のサイクルもつかさどっているため、からだが未成熟なこどもはトイレが身につくのが遅いし、老化でからだが衰えればトイレのコントロールがうまくいかなくなります。
また、腎の五志は「驚・恐」なので、びっくりしたり怖い目に遭ったりすると、腎が急激に虚して引き締める力を失い、失禁してしまいます。
そんなわけで、子どものトイレがうまくいかないとお悩みもあるでしょうが、難しいことを一生懸命習得しようとしてると思えば、少しは焦る気持ちも和らぐのではないでしょうか。
早い遅いはあるものの、いつかはできるようになりますし、ゆっくりお付き合いしてみてもよいかと思います。