インフルエンザと鍼灸
インフルエンザはウィルス性の感染症であり、通常の風邪と違って症状の現れ方が急で激しいのが特徴です。
感染症については、東洋医学では疫癘(えきれい)という病因のカテゴリーに入ります。
東洋医学では病の原因を内因(感情の動きによって病気になるもの)、外因(風、寒など人を取り巻く環境が原因となるもの) 、不内外因(内因、外因のどちらでもないもの)の
つに分けて考えますが、疫癘は不内外因になります。
季節や体質に関係なく、急激で激しく重篤な症状を呈するもので、現在でいう破傷風やはしか、ジフテリアなど死亡率も高い病気になります。
季節や体質などに関係なく発症するということは、東洋医学の理屈が通用しないので、鍼灸で治療するのは難しいと言えるかもしれません。
そういうこともあり、死に直結することも多い疫癘は古くから人々の恐怖であり続けました。
現在において西洋医学が医療の主流になっているのも、外科的治療技術の進展とならんで、細菌やウィルスの発見と交代やワクチンの開発によって感染症を克服してきたことが大きいと思います。
東洋医学には東洋医学のよさや得意分野がありますので、どちらが優れているという訳ではないですが、死の恐怖から解放されたインパクトは絶大です。
さて、インフルエンザは疫癘なのかというと、ちょっと難しいところではあります。
第一次世界対戦の時に世界中で大流行し、5000万人くらい死者が出たスペインかぜはインフルエンザですが、感染力と毒性が特異的に強かったことがわかっていて、これは疫癘といってもいいように思います。
一方、毎年冬に流行するインフルエンザは致死率が低く、治療も比較的容易なので、ひどい風邪とみることもできます。
とはいえ、感染後の急激な症状の進行具合は風邪とは違う激しさがありますし、悪寒がするから早く帰って休もうなどといった事前の対策がとりにくいです。
気を付けていてもかかってしまうことはある程度仕方ないですが、鍼灸治療もまったく役にたたない訳でもない、と考えています。
特に回復期に弱ったからだを回復させ、咳や喉の不調を改善するのによいと思います。
インフルエンザかも…という状況でも治療は断らず、やれることはやりたいと思っていますが、すでに発熱していたりしてる場合など、鍼灸院に寄るより早く帰って休んだ方がよい場合もありますので、事前にご相談いただけるとよいかと思います。