肝虚と肝実の違いについて
先日肝実という証があることについて説明しました。
肝虚と肝実、どちらも肝の変動なんですが、虚と実なので病理としては真逆です。
肝虚は血が足りていない状態、肝実は血が停滞して瘀血が生じている状態です。
そのため、証立てを間違うと、正しい治療にならないという問題が出てきます。
特に肝実の場合、血が停滞することで血のめぐりが悪くなる場所は部分的に肝虚のような症状を表すこともありますので、判断が難しくなる場合もあります。
証は脈を診て決定しますが、そのサポート情報として、からだの様々な特徴的な変化も診ます。
そのような肝虚と肝実の違いについて見てみます。
顔つき
顔の特徴は肝の場合目に表れます。
肝虚:目が切れ長でしゅっとした感じ。白目の部分が青みがかっている。
肝実:目はくりっとして大きい。
肌
血は潤いをもたらす作用があるので、皮膚には血の変動が現れやすいです。
肝虚:カサカサしやすい。
肝実:シミやニキビができやすい。目の下のクマ。
筋肉
肝の支配領域である筋にも特徴が出ます。どちらもコリは出やすいです。
肝虚:こむら返りなど、引きつりやすい。肩こり。
肝実:肩や肩甲骨の間がこる。筋腫などできやすい。
おなかの状態(腹診)
肝虚:おなか全体が引きつるように張っている。
肝実:おへその右下に硬結を感じる。
精神状態
肝虚:イライラしやすい。怒りっぽい。
肝実:我慢する。気鬱になりやすい。あまりしゃべらない。
胃腸症状
肝虚:胃に熱が波及すると食欲旺盛になり、便秘がちになる。
肝実:食欲は普通。便秘傾向。気鬱がひどいと十二指腸潰瘍になりやすい。
婦人科疾患
血にかかわる疾患が多いので、肝の変動が現れやすいです。
血のめぐりが悪いのはどちらもなので、冷え症状は両方にみられます。
肝虚:月経前症候群(PMS)になりやすい。生理痛。生理周期は短め。
肝実:月経不順または遅れがち。生理痛は激しくなりやすい。子宮筋腫。
これらの症状がすべて現れる訳ではありませんし、実際はっきり区別できるほど違いがない場合も多いです。
また、横になった時にすぐ目を閉じるのが肝虚、ずっと見開いているのが肝実という特徴もあります。
肝虚は血が足りないので、血を多く消耗する目を無意識に閉じるのに対し、肝実は血が余っているので、目を開け続けることができるのです。
肝虚と肝実の違いがなんとなくイメージできてきましたでしょうか?
自分はどっち傾向か考えてみると、日ごろ気を付けることも変わってくるのではないでしょうか。