耳ツボは、ツボではない?
ダイエットなどで知られている、耳ツボ。
耳にからだの各部位や臓器が反映されているとしています。
耳のどこを押すと何に効くのかな?と知りたくなるかもしれません。
ですが、鍼灸師さんにこの質問をしても、答えられない方がほとんどかと思います。
なぜなら、耳ツボはツボではないからです。
どういうことなのでしょうか?
人の体には14本の経絡が流れており、各経絡上に経穴があります。
経絡と経穴の関係は、線路と駅に例えられることもありますが、イメージ的にはそんなところです。
その経絡は、耳には通っていないんです。
耳の回りにはいくつかの経絡が通っていて経穴もありますが、耳自体には経穴がないので、東洋医学的には、いわゆる耳ツボは存在しないことになっています。
鍼灸の専門学校でも教えていないし、国家試験にも出ません。
そのため、鍼灸師さんは耳ツボについて知らないのです。
では、世の中に広まっている耳ツボとは何か。
これは、フランス人の医師、ポール・ノジェ氏が見つけた反射区です。
ノジェ氏は、耳が胎児の形に似ていることから、胎児のからだの各所にあたる耳の部位にそれぞれその状態が反映しているのではと考えました。
それで、耳のこの部分は腰とか膀胱とかを区分けしたのです。
その研究結果を発表したのが1957年。わりと最近です。
(東洋医学の文献にも耳ツボに類する記述があるようなのですが、ノジェ氏の研究内容と一致しているかどうかは不明です。)
耳ツボは点でツボ名を記入している画像もありますが、もとは細かく区分けしたエリアになっています。
耳ツボの方は東洋医学とは別に研究が進んでいるようで、アメリカ軍兵士の治療に使われていると先日の番組でも紹介がありました。
なお、耳ツボを使った施術をしているサロンなどでは、棒で刺激したり、チタンやステンレスの粒をシールで耳に貼るやり方をしていると思います。
はりを扱うには鍼灸師(はり師)の資格が必要ですが、はりを使わず、シールをはるだけなら資格がなくても扱えるからです。
とはいえ耳ツボに対応している鍼灸院もあるので、そこらへんはちょっとややこしくなっているのが現状です。
また、鍼灸師さんがあまり耳ツボを使おうとしないもうひとつの理由は、特効穴治療を好まないということもあります。
特効穴とは、先日ご紹介した、ものもらいには「二間」といったような、この症状を治すにはこの経穴、というある症状に特に効果があるとされる経穴の事です。
他にも、胃腸の調子を改善するとされる足三里とか、単発で使える経穴はいくつかあります。
自宅でお灸を使いたい方に、お灸を据えるおすすめの経穴としていくつか患者さんに紹介することもあります。
ですが、鍼灸治療で大事なのは、証にもとづいた治療なんですね。
証とはからだのバランスが今どのようになっているかの見立てのことで、鍼灸師さんは、証にしたがって、治療に必要な経穴をその都度選んで使っています。
証を重要視するのは、からだのバランスを整えることで今現れている不調を解消するというのが基本的な考え方にあるからです。
特効穴はその治療の過程で補助的に使うには便利なのですが、全体の治療には結び付かないんですね。
それは耳ツボも然りで、そういった意味であまり治療に用いようとはなりにくいのかと思います。
そんなわけで、耳ツボについてのご質問にはうまくお答えできないと思います、ご了承いただけますよう。。
とはいえ効果の期待できる耳ツボもあると思うので、機会があったら活用してみたいと思います。