物忘れはからだの弱りから
あれ、何を取りにこっちの部屋に来たんだったかな。
スマホ、どこに置いたっけ?見当たらない。
この話、前にもしたかも?
などなど、物忘れは誰にでもあるとわかっていながら、頻発すると心配になりますね。
若年性認知症を発症するのはまれですが、もしかしてと怖くなり、脳神経外科などを受診する方も少なくないそうです。
悩ましい物忘れですが、案外と精神的な問題というよりは、からだが弱っているときになりやすいものです。
東洋医学では、肝、脾、腎いずれかが虚しても物忘れ症状が出ることがあると考えます。
肝虚は血が足りていない状態ですので、当然脳にも十分血がめぐらなければ思考に問題が出てきます。
物忘れの他にも、考えがまとまらない、不安感があるなど心のバランスが崩れやすくなります。
例えば、生理前は思考力が普段より落ちて、頭が冴えてる状態と真逆な、最善の手が打てなかったり、どっちがいいのか迷って決められなかったり、意味もなく不安感に襲われたりすることがあります。
血が子宮に集まってきて他のところに十分めぐらないために、考える力も落ちてしまうのですね。
流産後体調を崩した方で、その時を振り返ってあの時は考えがまとまらなかったと話していただいたこともありました。
また、血虚は過剰なストレスや過労でもなりますので、働きすぎると思考力が落ち、合理的に現状を打破する考えが浮かばなくなってしまいます。
他人から見たら、そんな理不尽でひどい目に遭ってるなら会社辞めればいいのにと思うような場合でも、本人はそれを実行に移す決断力も思考力もなくしてしまっているのです。
脾虚でも物忘れになることがあります。
脾は五志でいうと「思」です。
脾が虚すとこの「思」がうまくいかなくなり、物忘れすることがあります。
思い悩むことが過ぎると食欲が落ちますが、悩むことで脾虚になったりもしますので、思考と脾は深い関係性があるのです。
そして脾が虚していると十分栄養が取り込むことができなくなるので、気血津液の生成も十分できなくなります。
これにより肝虚や腎虚につながってしまいます。
つまり老化ですね。
腎は津液を蔵していまして、骨を養っているんですが、骨から作られる髄が脳を作っていると考えれられています。
そのため、脳は「髄海」とも言います。
この髄が加齢により干上がると、脳に十分な血や津液が足りなくなり、認知症になってしまうのです。
認知症の前段階の物忘れは、腎虚からきていることが多いということになります。
いずれにしても、物忘れがひどいときは、かなりからだが弱っていると考えてよいと思います。
からだを休めるだけでなく、今の環境で大丈夫なのかを振り返ってみることも必要かもしれません。
思考に自信が持てない場合は、身近な人に相談するのもひとつです。
そのような時は客観的に自分のおかれている状況を把握できていないことも多いからです。