モクサアフリカ~足三里へのお灸を結核の治療に役立てる
昨日NHKで「東洋医学ホントのチカラ」という番組がありまして、はり、ヨガ、漢方薬、お灸に分けて特集していました。
はりの方はアレだったんですが、お灸の特集がなかなか興味深いものがありました。
現在アフリカのウガンダなどで、モクサアフリカというイギリスのボランティア団体が、結核の補助的治療のためお灸を広めているという内容です。
モクサとはmoxa、お灸の英語です。
なお漢字は艾と書きます。
代表のマーリン・ヤングさんは鍼灸師。
勉強のために読んだ原志免太郎博士のお灸に関する著書のなかに、結核に足三里へのお灸が効果があるという研究結果があることに着目しました。
原志免太郎博士は戦前の医師で、まだ抗生物質のない時代に日本人の死亡原因一位だった結核の治療のため、お灸を研究したとのこと。
うさぎを使った実験などでかなりきちんとしたデータを取っていたようです。
現在アフリカではエイズの次に死亡者の多い病気が結核だそうです。
十分な医療が受けられない環境、栄養が十分でない食料事情などは、戦前の日本に似た状況なのかもしれません。
そこでマーリンさんは結核の治療に、安価で誰でも使いやすいお灸を使ってみることにしたのでした。
番組では、足三里へのお灸を続けた結果、結核から回復した方も登場し、その効果を実感していると話していました。
マーリンさんが広めていたのは、もぐさを米粒大に捻って足三里に据え、線香で火をつける昔ながらのお灸。
マーリンさんはもちろんですが、アフリカの皆さん、お灸上手!慣れてる!
ちゃんとお灸がアフリカの人たちの間に広まっているということが、見るだけでわかります。
使っているもぐさもお線香も馴染みのあるもので、なんだか嬉しくなる特集でした。
足三里へのお灸は、鎌倉時代の吉田兼好著「徒然草」、江戸時代の貝原益軒「養生訓」、松尾芭蕉「奥の細道」にもやるとよいと紹介されている、歴史ある健康法であり、戦前までは庶民にも浸透していました。
今では自宅にもぐさを常備している家庭はあまりないと思いますが、以前は身近な養生法としてお灸があったのです。
自宅での病気の治療と言えば処方された薬を飲むことが主流の現在、薬以外でもからだをよくする方法があるということが少しでも浸透するといいなと思いました。
足三里は胃経の原穴なんですが、結核は肺の病気なので肺に関係した経穴でなくてよいのか、調べてみました。
尊敬する首藤先生の著書に結核についての記述がありました。
結核は重い疾患なので、繊細な治療が必要になります。
そのため、直接的な治療は強すぎるようで、胸から上の経穴は使用しない方がよいとのこと。なにより大切なのは、体力を増強することで、そのためには脾経を使うのがよく、足三里や中カン(にくづきに完)などが効果を期待できると。
なるほど。。
確かに時間はかかるけれども、地道な足三里へのお灸が栄養不足のからだを支えてくれるチカラになる。
お灸百日、という言葉もあります。
お灸の力を再確認できた、よいきっかけとなりました。
ちなみに、原志免太郎博士は104才まで診察を行い、108才まで存命されました。これもお灸の効果かもしれません。