お灸百日。
寒いせいか、筋肉や関節の痛みを訴える患者さんが増えているように思います。
心配になって整形外科でレントゲンを撮ってもらっても、骨には異常がなく、という場合が多く、痛みの原因はよくわからないままだったりします。
全部がそうだとは言えないと思いますが、東洋医学では、痛みの原因は「不栄即痛」「不通即痛」と考えられています。
つまり、栄養状態が悪いか、流れが通じてないか、いずれかの理由によるというのです。
栄養状態が悪いということは、現在の日本ではあまり見られないと思いますので、たいがいは流れが通じてないということになります。
流れが通じていない、その原因に、寒さによる筋肉のこわばりがありがちなので、冬に関節痛などが多くなるのではないかと推測されます。
ただ寒さだけでは痛みに至ることは少ないので、無理したとか、使いすぎたとか、寝不足だったとかいろいろな要因が重なっていることが実際のところだとは思いますが。
痛みが発生してあまり時間も経たないうちにタイミングよく治療できれば、それほど回数を重ねなくても改善することが多いです。
しかし、痛み出してから何ヵ月もたっていたり、五十肩や腱鞘炎など原因が案外根深いものだと、治るまでに時間を要します。
そういう場合は痛むところだけの問題ではなくなっていて、からだを改善していく必要があるので、時間を必要とするのです。
でもそれまでずっと痛みに苦しまなければならないのか、ということになりますよね。
それをサポートしてくれるのが、お灸になります。
お灸は痛むところに直接働きかけることができます。
ただし、少しずつです。
竹細工を加工するとき、竹を曲げるために火にあてますが、強い火だったら燃えてしまいますし、竹を強く曲げればおれてしまいます。
鉄の加工も同じで、一度に深い型に押し込むと割れますが、何度かに分けて徐々に変形していくと、成形できます。
厳密に言えば物理的な現象が同じではないかもしれませんが、少しずつ、絶え間なく続けると結果が出ることはよくみられますね。
お灸も、毎日一回でよいので、自分でお灸を据え続けることでよくなることが多いのです。
昔の人はそれを「お灸百日」と言ったそうです。
お灸を百日続けると、効いてくるということなんです。
すぐに結果を求めがちな現代の感覚からすると悠長に思えるかもしれませんが、急がない方がよい治療も、大事だと思います。