逆子の治療は安産にも。
逆子になっている場合、逆子体操などもありますが、治療としては効果的なものは今のところないのが現状です。
そんな中では、鍼灸治療が確率的にはかなりよい結果が得られているように思います。
産科の先生が逆子の治療として鍼灸をすすめることもあるそうで、いままで鍼灸治療を考えたことがなかった方が治療にいらっしゃることもあります。
鍼灸治療が逆子に有効というのは、わりと最近のことです。
昔はエコーなどもちろんありませんでしたので、出産時にならないと逆子かどうかわかりませんでした。
江戸時代くらいから、お腹の中では胎児は下を向いていることがわかっていたそうで、体験的に鍼灸治療での効果が広まったのではないかと思います。
戦後、いままで徒弟制度でばらつきのあった鍼灸治療を、古典を研究し、臨床にいかして来た先生方がまとめて現在の鍼灸治療の基礎ができましたが、そんな中で、鍼灸治療の逆子への効果も確立されてきたものと思います。
さて、逆子の治療で有名なのが「至陰」へのお灸です。
至陰は、足の小指の爪の生え際にあり、膀胱経という経絡の終点にあります。
なぜこの経穴が逆子を直すのによいのでしょうか?
膀胱経は、目尻の近くから、眉頭→額→頭→後頚部→背中→腰→臀部→大腿後面→下腿後面→くるぶしから足の小指に至る、長い経絡です。
膀胱経は心の熱を腎に届ける働きがあります。
そのため熱は膀胱経を下降していき、足までそれを届けます。
この下に向かう流れは、尿を排出したり、出産したりなどの力にもなります。
赤ちゃんもこの流れの影響により下を向くのですが、冷えやストレスなどで流れがスムーズにいかなくなると、どっちを向いていいのかがわからなくなってしまいます。
それが逆子の原因となります。
膀胱経の終点である至陰にお灸をすることで、栓が抜かれたようになり、流れがつきやすくなります。
膀胱経の流れがはっきりすると、あかちゃんも自分が向くべき方向がわかるので、逆子が直る、という理屈です。
この治療は、安産にも繋がります。
下に向くながれがはっきりするので、スムーズな出産に繋がることがひとつ。
また、出産は腎が虚すことで始まるのですが、腎を虚させ過ぎると産後の肥立ちによくないので、腎の表裏関係にある膀胱経を虚させることにより、腎の自然な虚を促すことができます。
逆子の治療には至陰の他にも、三陰交という経穴にお灸したりなどいろいろ取穴します。
冷えを取ったり、子宮を柔らかくしたりすることで赤ちゃんが動きやすくして、回転を促すようにするのです。
とはいえ、逆子自体は病気ではありません。
逆子だと出産が帝王切開になるので、出産後の体力の回復に時間がかかる可能性があったり、二人目の出産も帝王切開の選択となることが多くなります。
それをできたら避けたい、という大人の事情であり、赤ちゃんは悪くないのです。
あまり、まわってねーっとプレッシャーをかけすぎないようにしてあげてほしいなと思います。