東洋医学ではからだをどうみているのか4~三焦
喉が乾いたときに一気にビールを飲んだ後、「五臓六腑に染み渡る~」と言ったことはあるでしょうか?
からだ中で美味しさを感じるような満足感を表現している言葉です。
さて、これ、五臓五腑じゃないんでしょうか?
これまでさまざまなものが五行に振り分けられるとしてきましたが、この六腑って、何?
その6番目の腑が「三焦」というものになります。
もともとは5つでしたが、からだの生理・病理を考えていく上でこの三焦というものが必要になってきたために、概念として追加されました。
三焦は働きはあるけど実体はないとされています。
(三焦と対になる臓で「心包」というのもあるのですが、ここでは割愛します。)
三焦とは、上焦・中焦・下焦の3つをまとめていったものです。
からだの胴体部分を横に3つに分け、それぞれの場所で行われる一連の働きをいいます。
上焦とは
横隔膜から上の機能になります。
上焦には肺と心臓があり、肺は気と津液を、心は血を全身に巡らせ、からだの各所を潤し、滋養し、熱を送る働きをします。
中焦とは
横隔膜とへその間の部分の機能をいいます。
中焦には肝と脾があり、取り込まれた飲食物を消化・吸収(受納・腐熟・和降)して気血津液を取り出し、それを上焦に送ります。
下焦とは
気血津液を取り出して残ったかす(糟粕)から水分を取り出して膀胱に送ったり、全身に散布して余った水分を腎に送ります。
食べ物を消化吸収→気血津液を得て全身に送る→余った水分を回収、再生か排出にまわす。というこの一連の作用をサポートするのが三焦の働きです。
肝・心・脾・肺・腎の五臓が会社の各部署だとすると、三焦は横のつながり的なものといえます。
三焦のこの「焦げる」という漢字が使われているように、三焦の働きのひとつは熱=力に関係しています。
気血津液というエネルギーを産み出す力、それらを全身に巡らせる力、必要な水分を回収し、不要なものを排出する力をもって働いています。
一方で水分代謝全般にも関わっています。
からだ全体の熱や水分の偏りがあって、それで不調が生じている場合は、三焦を治療するとよいということになります。
三焦の概念はイメージする形がないのでとらえにくいですが、からだの生理や病理を理解するのに役立ちます。
例えば、からだに余分な熱がなんらかの原因で発生した場合、熱は上昇する性質があるので、上焦にたまります。
そうすると、心や肺の不調、つまり動悸や狭心症、咳や喘息、鼻の方に上がれば鼻づまり、副鼻腔炎につながります。
中焦がうまく働かない場合、十分な栄養が取り込めないので、全身に影響が出ます。つまりだるさ、疲れなどです。もちろん胃腸の不調全般に関わります。
下焦は水分代謝を行っていますので、冷えやすい。膀胱や子宮、卵巣の不調を引き起こします。
五臓と合わせて三焦をうまく使えると、治療も幅が広がると考えています。