スピッツのCDジャケットデザインを考察する 1~「スピッツ」
スピッツはこれまで15枚アルバムを出していて、他にもシングル集3枚と、シングルのカップリング曲やカバー曲などを寄せ集めたアルバム3枚出しています。
スピッツのアルバムは、壁に掛けて見えるように飾った収納をしてもいいと思うような、すてきなデザインになっていて、どれもとても手が込んでいます。
今回はそれらを少しずつ紹介してみたいと思います。
スピッツのアルバムデザインの特徴は
- 余白の使い方
- 色使い
- 物語性
にある、と考えています。
どれもこの3つを満たしている訳ではありませんが、このことを考えて眺めてみるとおもしろいと思います。
1stアルバム「スピッツ」 :1991年3月25日リリース
メジャーデビューして初めてのアルバムになります。
普通、バンドのことを知ってほしいという気持ちから、メンバーの写真を使ったものが多いところなんですが、これはヒトデの写真をデザインしたものになっています。
メンバーの写真は、裏面にモノクロで掲載されているのみ。
バンド名も、アルバムタイトルと同じためか、隅っこに気がつかないほど小さく「スピッツ」と載っているだけ。
余白の濃い水色とヒトデの白とのコントラストが美しく、ヒトデの赤い模様がアクセントになってます。
重なるヒトデの一方は水色に霞み、奥行きを感じます。
なんとなく沈んでいくような感じがするせいか、ちょっとさみしい、はかなげな印象も受けます。
シンプルで美しいデザインで、リリースから27年たった今でも古くさい感じはしません。
スピッツの音楽もそうですが、その時の時代感がないんですよね。
また、1991年はまだバブル期の真っ最中。
CMもミュージックビデオも、海外に撮影にいったり、ヘリを飛ばしたり、豪華なセットを組んだりして製作されており、お金をかけるをよしとした空気がありました。
そんな中でこれから売り出そうというバンドのファーストアルバムのジャケットを、ここまでシンプルにするには、ある意味勇気ある行為だったんじゃないでしょうか。
さらに、よくよくこのモチーフを考えてみると、なぜヒトデなのか?重なり合ってるということは、そういう意味も込めているのか?…なんか、ヘンじゃない?なんてどんどん深読みしていってしまいます。
それなのに、デザインの美しさが、それを凌駕してしまうんですね。
まさにスピッツの曲の歌詞のように。
結局どういう意味?実は変なこと歌ってんの?といったモヤモヤも、美しくさわやかなメロディーと歌声、演奏にのってしまえば、さらりと流されてしまいます。
爽やかでちょっと(かなり?)ひねくれものなスピッツの持ち味を、図らずも、なのかあえて、なのかわかりませんが、よく表しているデザインではないかなと思います。
今なおこのスタンスが保たれているということが、自然に見えて驚きですね。