スピッツのCDジャケットデザインを考察する 3~「crispy!」「空の飛び方」
引き続き、スピッツのアルバムデザインについて書いていきたいと思います。
4thアルバム「crispy!」:1993年9月26日リリース
インディアンの羽飾りを被ったマサムネさんがジャケットに。
4枚目にして初めてバンドメンバー(ボーカルだけだけど)が登場です。
が、変装(コスプレというべきか?)した上に目がちらっと見えるだけで、それとはわからないほどの露出…。これが精一杯だったのかな。
そしてこれまでと違うのがもうひとつ、アルバムタイトルがわりと大きく載っています。
画面の2/3はインディアンの羽飾りが閉めているんですが、コントラストがつけられて細かいところはつぶれてほとんどが赤のベタ塗りで、羽のふさふさと顔の黄色の2色で画面のほとんどを埋めています。
その中で白い縁取り部分と側頭部の青い模様がアクセントになっています。
赤、黄色、白にちょこっと青と、挑戦的な目線が入って、全体的に元気がいい印象。
これまでのちょっとシュールで静かな世界観と違って、キャッチーな勢いがあります。
今回のアルバムは、スピッツにとってこれまでとはちょっと方向性を変えた内容になっていることもデザインに表れているのかもしれません。
デビューして2年経ち、アルバムを3枚出したけれどあまり売れなかったスピッツ。。
このままやりたいようにやっていくかどうか考えたとき、自分達を支えてくれたスタッフの気持ちに答えようと、売れることを意識してバンドを続けていく選択をします。
有名なプロデューサーを招き、ポップなメロディーやオーケストラをバックに使ってみたりなど、いろいろとチャレンジし始めたのがこのアルバムなのです。
個人的にはスピッツのアルバムデザインの中では好きな方ですね。
色がはっきりしていてそのバランスがいいし、画面の切り取り方が粋だなと。
なお、アルバムで視線がこちらに向いている(まっすぐではないけど)のも、このアルバムのみです。
5thアルバム「空の飛び方」:1994年9月21日リリース
天使風な羽をつけた女の子、花の模様のテクスチャー、黄色のフィルター加工。
おしゃれに寄せてきた、という印象です。
素敵なんですが、これまでのスピッツらしさ、、ひねりが効いてるところとか、グラフィカルが構成とかが薄れてしまったと思ってしまいます。
バンド名は黄色の補色である青い枠の中にはっきり載せられています。
一般リスナーへ訴求したのかなぁ。
このアルバムから、デザイナーさんが変わったのですが、まだちょっと模索段階だったのかもしれません。
頑張ってみた4thアルバムがあまり振るわず、いろいろと試しているちょっと苦しい時期だったのですが、内容はヒット前夜といってもいいような雰囲気もあるような気がします。
この半年後にブレークするなんてわからない訳で、振り返ってこそ言えることなのですが。
ネガティブ気味な内容に傾きましたが、デザインとしてはかわいいし、わざとらしくないふさふさの羽がかわいくて素敵です。
またスピッツのアルバムに女の子が登場した最初のもので、今後のデザインの布石にもなっているとも言えます。
シュールなのもかわいいのも飲み込んで、結局スピッツのデザインになっているんですよね。