スピッツのこの歌詞が好き3~ランプ
「ランプ」はスピッツの2013年9月発売の「小さな生き物」というアルバムに入っている曲です。
アルバム製作の時期が東日本大震災の後だったため、その影響を受けた作品になっているといわれています。
スピッツは楽曲の解釈を聴く側に委ねている姿勢をとっているので、その事に関してはわりと否定的なコメントをしています。
でもやはり感受性豊かなアーティストが、その事に対し全く無関係で作品をつくることはないのではないでしょうか。
アルバムを通して聴くと、やはり災害に対する無力感、人災に対する怒り、亡くなった方たちへの鎮魂、そんな状況下で生きていこうとする人たちへの温かい目線を感じずにはいられません。
で、この「ランプ」という曲ですが、震災というか原発事故で生活が一変してしまった人を歌っているのかな、と勝手に解釈しています。
1番歌詞↓
ただ信じてたんだ無邪気に ランプの下で
人は皆もっと自由にいられるものだと
傷つけられず静かに食べる分だけ
耕すような生活は 指で消えた
取り残されるのは 望むところなんだけど
それでも立っている理由が あとひとつ
あなたに会いたいから どれほど遠くまででも
歩いていくよ 命が灯ってる限り
無邪気に、という言葉に自嘲的な響きを感じます。
何も知らないで、というような。
ランプは電気の比喩と考えると、電気が通っていて明かりがつくなんて当たり前すぎて、そのベースにあるものなんて考えてもいなかった。
その下で過ごす、自分達の生活を賄うくらいのささやかな田舎生活。
そしてそれは“指で消えた”と。
無邪気やランプの言葉の選び方もうまいですが、この表現、この短い一言で何が起きたか表してしまうなんて…。
自然に壊されたのではなくて、指で、なんですよね。
そして、消えたという言葉の、怖いくらいのあっけなさ。
人災ってことだけじゃなく、感情もなく、指先でピンっと近くにあった消ゴムかなにかを弾き飛ばすような軽い無責任さも感じさせます。
そしてその事に対する静かな怒りも。
一緒に暮らしていたであろう「あなた」は、もういないのだろうと思います。
だけど恥ずかしくない自分で(あの世で)会いたいから、どんなにつらくても命の限り生きていくという、力強い決意。
ランプは電気の象徴でもあり、命の灯の意味でもある。
勝手にそう解釈してるだけなんですが、涙が出そうな歌なのです。。
2番の歌詞では、ビルの谷間から空を見上げるという描写があるのですが、「食べる分だけ耕すような生活」をしてたのに、今は都会にいるのか、と思うとこれまた切なくて。
直接的な言葉を何一つ使わなくても、使わないからこそ伝えられるものがあるのだなと、思いますね。
メロディーも優しく暖かく、でも少し寂しくて、美しいのです。
スピッツの曲は聴くとなんとなく落ち着きます。
きっとそれは、こんな風にいろんな思いをのせて作っているからなのではないかと思っています。