スピッツのこの歌詞が好き2~みなと
「みなと」は2016年4月にリリースされたスピッツの41枚目のシングル曲です。
最新アルバム「醒めない」に収録されています。
もう2年以上経ってしまったのか。。
スピッツの曲といえばちょっと意味わからん…という歌詞も多い中、わりとみなとはイメージしやすい方と思います。
恋人との別れとも生と死とも解釈はできますが、自分はこの歌は、亡くした友人を思いながら今を生きている“僕”を歌っているのかなと解釈して聴いています。みなとという言葉からイメージできるそれは、やはり津波によってかと。
一番の歌詞:
“ふねに乗る訳じゃなく だけど僕はみなとにいる
知らない人だらけの隙間に立ち止まる”
“遠くに旅だった君に 届けたい言葉集めて
縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて”
“汚れてる野良猫にも いつしかやさしくなるユニバース
たそがれに あの日二人で 眺めた謎の光思い出す”
“君ともう一度会うために作った歌さ
今日も歌う 錆びたみなとで”
以下、わたし勝手解釈↓
震災で環境が変わってしまった生活に疲れたとき、“僕”は彼がいってしまった海ーみなとに向かう。
彼の不在が受け入れがたく、また会うことを信じて、いろんな思いをのせて一生懸命作った歌を歌いに行く。
ひとりぼっちになってしまった“僕”を、まわりのみんなは優しくしてくれたよ。
歌いながら、幼い頃裏山で遊んだ夕暮れの帰り道、UFOみたいな不可解な光(今思うと飛行機か何かかもしれないけど)を見て、二人で怖くなったことなどを思い出したりしている。
ああ今日もみなとに来てしまった。
この錆びたみなとに。
2番の歌詞:
“勇気が出ないときもあり そして僕はみなとにいる
消えそうな綿雲の意味を考える”
“遠くに旅だった君の 証拠も徐々にぼやけ始めて
目を閉じてゼロから百までやり直す”
“すれ違う微笑みたち
己もああなれると信じてた”
“朝焼けがちゃちな二人を染めてた
あくびして走り出す”
“君ともう一度会うための大事な歌さ
今日も歌う ひとりみなとで”
以下、わたし勝手解釈↓
もっとしっかりやらなきゃと思うけど、やっぱりみなとにきてしまう。
ぼんやり空を眺めていると雲が少しずつ形を変えて流れていく。
消えてしまいそうな雲、、本当に君はもういないのか?
そんなことを思う一方で、君の記憶が少しずつあいまいになっていく。
ひとつずつ思い出さなければ、あの雲のように消えていってしまいそうなほどに。
前を見て新しい生活を建て直し、また楽しいこともあるだろうと思っていたのになぁ。
ああそういえば若い頃、朝まで遊んで眠くなって、みんなが起きる前にあわてて走って帰ったこともあったね。
僕はやっぱりまだ信じられないんだ、君がもういないなんて。
この歌を歌いながら、ひとり、待っている。
帰ってこない友人を思いながらしかし、この歌に歌われているのは、なかなか前に進めない“僕”自身の姿ではないかと思っています。
震災の復興に向けて頑張るまわりの人たちにどこかついていけず、所在なさや後ろめたさを感じている“僕”は、みなとにきて友人を思いながら歌を歌うことでそんな自分と折り合いをつけている。
けれど、時の流れは友人の記憶を少しずつ奪っていく。
きっともう自分も前を向かなければならないのはわかっている。
そんな“僕”を象徴しているのが「錆びたみなと」という歌詞の一節です。
ここで出てくるみなとは、大規模に改修されることなく震災前の姿を残している。
時が止まったかのように見えるけど、でも確実に時間は経過している。
このみなとは、そのままこころを震災前に残したままの“僕”の姿に重なります。
それが「錆びた」という言葉に集約されているんじゃないかと。
言葉の選び方、ほんと素晴らしいなと、しみじみ思うわけです。
そしてこんな目線で歌を作ることに、マサムネさんらしさを感じます。
励ましたり、応援したりとかじゃなくて、はなし聞いてるのかどうかわかんないような顔しながらも、ずっとそばにいてくれる友達みたいな。
こういうところが、やっぱりスピッツいいなと思うところなんですよね。
歌詞についてばかり書いてしまいましたけど、マサムネさんの歌声が透き通るようにきれいで、メロディーもシンプルでありながら美しくて、そうかと思うとベースラインの音数が多くてそれが曲に深みを与えていて、ギターも特徴的なグレッチの音色がすごく合っていて…この辺で。
名曲!