東洋医学ではからだをどう見ているのか2~気血津液
前回、人のからだは肝・心・脾・肺・腎 の五臓および胆・小腸・胃・大腸・膀胱の五腑で組織された会社のようなもの、と説明しました。
今回は、東洋医学を考える上で欠かせない「気・血・津液」について説明していきたいと思います。
五臓や五腑が会社の部署なら、気血津液は、会社を運営していく上で必要な「人・お金・情報」のようなものと言えるかなと思います。
会社と同じように、五臓それぞれに気血津液が働いていて、それぞれの五臓の間を行き交っています。
ではそれぞれの働きや役割について見ていきます。
気
東洋医学でつまずいたり、わかりにくかったりする一因に、「そもそも気ってなんなの?」ということがあるのではないでしょうか。
元気、やる気、気が乗らない、気が進まない、気疲れする、気が利いている、気配り、気配、気になる、気のせい、気に入る、気が短い、気持ち悪い、気体、熱気、気合い、気質など、気に関する言葉は身近にたくさんあり、心の動きや空気感など様々な意味で使われてます。
気という漢字は、お米を蒸し上げるときに立ち上る蒸気の象形文字からきているという説があり、もやっとした気体がもとの意味のようです。
東洋医学で言うところの気は、「とにかくなにかが動いている状態」という感じの意味です。
気が完全にめぐらない状態は死を意味しますし、からだから排泄されるものは気(け)が渇れたもの=穢れと呼ばれ、不浄なものになります。
授業では、気は活動のもととなる精緻な物質と習ったと思います。
精緻な物質、つまり原子レベルくらい落とし込めて考えるのがいいかもしれません。
例えば、ドミノ倒しではひとつひとつのドミノが倒れているだけでなにも流れていないのに、なにかが滑らかに流れているように見えます。
分子や原子のようなものの微細な動きが大きな流れを作り、気の流れとして捉えらえることができる、と個人的には考えています。
物理的にも、水の分子H2Oが揺り動くこと=温度上昇ですよね。
気がめぐるというのは、からだのどの場所においても適切な活動がなされているということであり、すべてのドミノがキチンとならんでいる状態と考えられます。
気が滞るはその逆で、どこかのドミノが詰まったり倒れてなかったりする状態。
気の不足は、適切な活動をするには力が足りてない状態。
会社で言えば、社員に例えるとわかりやすいでしょうか。社員が生き生きと所属している部署で働いているのが気がきちんとめぐっている状態。
効率悪く仕事して業務が停滞したり、社員が足りなくて業務が回らないと、ゆくゆくは会社の経営に影響が出ますね。
いろいろとイメージしてみてください。
血
血は、血液以上の意味を持ちます。
血脈を気と共にめぐって各臓や四肢に栄養と潤いをもたらします。
血は気と津液でできていて、熱を持っています。
日中は気と共にからだをめぐり、夜は肝に戻ります。
血が足りないと、筋肉がひきつったり、皮膚がかさかさになったり、髪が抜けたりします。
血は脾で作られ、肝が蔵して流量や配分をコントロールします。
津液
津液はからだに必要な水分のことで、津は清らかでさらさらと流れる水分で、体内の熱を冷ましたり、汗で熱を発散するのに寄与します。液はからだのなかをゆっくりめぐり、関節や髄を潤します。
体内に滞る余分な水分は痰とか湿といって、むくみや関節痛などの病気の原因になります。
津液が不足するとからだの熱を冷ますことができず、からだが熱を持ってしまい、それが様々な病気に繋がります。
津液は脾で作られて肺に送られ、肺はそれを全身に散布して各臓を潤し、腎はそれを回収して管理し、不要なものを膀胱へ送ります。
日本の鍼灸治療では気血津液にフォーカスして病症を考えることはあまりしませんが、中医学では気血津液弁証といって、気血津液の状態から病症を診ることがあり、臓腑で診る臓腑弁証と共に漢方で採用されています。
ちょっとややこしかったと思いますが、うまくイメージできれば、気や血といった言葉が出てきたときに理解しやすくなるのではないかと思います。
次回は寒熱の考え方を説明してみたいと思います。