どうして病気にかかるのか②内因
昨日は病気になる原因と、そのうちのひとつである外因について説明しました。
今日はもうひとつの原因である内因について書いていきたいと思います。
外因がからだの外側からの影響によるものであることに対し、内因は自身のからだの内側に原因があるものをいいます。
そして病気の原因としてからだの中の何が影響しているかというと、こころの動き、つまり心理的なものだというのです。
今でこそ、思い悩みすぎたりストレスを受けたりして体調が悪くなる状態を見る心療内科という分野がありますが、東洋医学では最初からこころとからだを分けて考えることはありませんでした。
こころの動きも、寒くて風邪をひいたり、働き過ぎて疲れたりするのと同じくらいからだに影響すると考えています。
内因は、怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の7つがあるとされ、これを七情といいます。
七情による性格の違いについては、以前も説明したことがありますね。
これらの感情は誰もが日々感じていることなので、これだけで病気になるというわけではありません。
外因が自然環境、季節の気候に過ぎないということと同じです。
しかしこの感情の度合いが過ぎると、からだに悪影響を及ぼすということなのです。
「怒」は肝の持つ自然な感情です。
肝は外や上に向かっていく性質があり、肝がよく働いている状態では積極的、外交的、徹底的な性格として現れます。
肝が弱ると優柔不断になるというお話は以前もしましたね↓
この性格が行き過ぎると、肝を傷めることになります。
例えば、締め切りに間に合わないから徹夜してでも終わらせるとか。
このように無理をし続けるとエネルギーである血をどんどん消耗していくので、肝が虚してしまいます。
肝虚証になると、もともとの肝の性格は過剰になります。
無理している状況でさらに頑張ろうとするわけですから、現実問題として無理が生じますので、うまくいかないことにイライラしたり、人を攻撃したりしてしまいます。
そしてそれらは肩こり、頭痛、不眠など肝虚証としての症状につながっていくのです。
「喜」は心の持つ自然な感情です。
心がきちんと働いている時は、心の陽気により、にこにこと温かい空気をまとった雰囲気になります。
これが過剰になると、心を傷めます。
例えば憧れの芸能人と会えた!と喜ぶあまり失神するなどです。
心は精神状態を管理しているので、そこが失調してしまうのです。
「思」は脾の持つ自然な感情です。
脾は五臓の中でも一番からだの奥にあり、考えをじっくりめぐらせて正しい行動がとれるようにしています。
脾がしっかりしていれば、考えもまとまり、記憶力が保てます。
それが思い悩みすぎると、脾を傷めてしまいます。
脾を傷めると気血津液の生成が悪くなり、からだに十分いきわたらなくなりますので、倦怠感、体が重い、うつ状態という脾虚証の病症を呈してくるようになります。
食欲もなくなって栄養も取り込めなくなるので、ますます脾虚が悪くなってしまいます。
「憂・悲」は肺の持つ自然な感情です。
肺の、冬に向かってからだを閉じていこうとする内側へ向かう性質を持っているのです。
一人の時間を大切にし、穏やかで静かな性格をつくります。
しかしつらいことがあったりして悲しみが過ぎると、肺を傷めます。
気のめぐりが悪くなり、行動しようとする気力がなくなってしまいます。
慢性的に咳き込んだり、風邪をひきやすくなる、つまりなんだか常にかからだが弱いような感じになります。
「恐・驚」は腎の持つ自然な感情です。
腎の持つ、なにかに備えておいたり、状況に応じて感情を抑えた行動をとったりといった、慎重で謙虚な性質を表しています。
腎がしっかりしていると、多少のことでは動じない、頼りがいのある感じの性格になります。
それが交通事故やパワハラなど、恐ろしい目に遭遇した経験があると、腎虚になりやすくなります。
腎の引き締める力が弱まるので、気持ちがしっかりせず常に不安でビクビクするようになります。
腎虚証になると動悸がするようになったり、肥満になりやすくなったりします。
このように、内因によって不調になることは案外身近に感じているかもしれません。
鍼灸治療では、虚してしまった臓を補い、もとの状態へ戻すように治療していきます。