肩こりにこそ、鍼灸。
肩こり改善に鍼灸治療はとても向いています。
治療している側からすると普通に思えていましたが、鍼で肩こりがよくなるの?!というリアクションも受けることがありますので、あらためて肩こりについて触れてみようかと思います。
肩こりの原因は、肩や首の筋肉が硬直して動きが悪くなり、血流が阻害されて痛みを感じる物質が生じることで起こります。
長時間同じ姿勢を取り続けていることが特によくないです。
人の頭部は5~6kgもあるのですが、支えているのは骨では頸椎だけ。
骨以外を筋肉がバランスを取りながら支えています。
眠くなったり、酔っ払ったりしたとき、首が不安定になってがくんとうつむいたり、上を向いたままになったりしますね。
コントロールを失えば、容易に首は真正面を向くことができなくなります。
つまり、普段日常生活を送っている間は絶え間なく筋肉が働いて、見たいものをきちんと見られる位置に頭を据えているのです。
筋肉が伸び縮みする動きによって、静脈の血管がポンプのように押されて心臓へ還流することができます。
同じ姿勢でいるということは、筋肉があまり動かないので静脈の流れが悪くなります。伸び縮みが激しくなくても、姿勢を保つだけで筋肉は疲労していきます。
それをよくするには新しい血液が必要ですし、乳酸などの不要なものは取り除きたい。でも血流が悪いのでその供給と排出がうまくいかなくなる。
そうすると、筋肉はしなやかさを失い、痛みを感じるようになるのです。
東洋医学的には、肝虚証などで不要な熱(虚熱)が発生し、(熱は上昇する性質があるので)からだの上部、つまり肩や首に停滞することで肩こりが起こると考えます。
この熱の停滞が激しくなると、頭痛や耳鳴りなどの症状が引き起こされます。
逆に言うと、頭部の症状のおおもとには肩こりがあることが多いです。
肩こりは仕方ないとあきらめていると、思わぬ不調に悩まされるかもしれません。
それで治療はというと、まずは本治法で虚熱の発生原因をおさえます。
肝虚証、肝実証、脾虚証など、証に合わせて治療を行います。
その後、熱の停滞を取り除くような治療を行います。
ひとつは、凝っているところを通っている経絡上の経穴を取る(循経取穴)こと。
首や肩は様々な経絡が通っているので、そのうちのどれに一番影響が出ているか見て、熱を取るのが得意な経穴に鍼をすることで、熱をさばいていきます。
もうひとつは、凝っているところを直接緩めること。
鍼を軽く当てる(接触鍼)ことで硬くなっていた筋肉に刺激が伝わり、動きを良くします。
強い痛みを感じたり深く刺したりすると、からだが警戒モードになってかえって筋肉が緊張して硬くなるので、そう感じる手前のわずかな刺激のみ与えるようにします。
さらに、お灸で仕上げます。
お灸の熱により、停滞していた余計な熱を取り除き、温めることで血流を改善します。
それにより鍼の治療で緩んだ首や肩を、さらにやわらかく整えていきます。
この、本治法→循経取穴→患部への接触鍼→お灸という組み合わせで、からだへの負担がほとんどないままに肩こりを改善することができます。
力を使わないので揉み返しもなく、治療も痛くなく、むしろ気持ちよいくらい。
ただ単に肩こりに鍼灸治療をお勧めする内容になってしまい、オチもないですが、肩こりの治療は効果が表れやすく、鍼灸治療をやったことがない方にも入りやすいかと思います。
肩こりにお悩みの方は、ぜひ試していただきたいなと思います。
五十肩は肩こりより病が深いのです。。