脈で何を診ているの?
治療を始めるとき、最初に行うのが、患者さんの脈をみることです。
脈は、手の平側の親指の付け根から少し下、骨が外側に少し出っ張ったところに指を3本当ててみます。
片方の手で3ヶ所、両手で6ヶ所になります。
手首に近いところから、寸口・関上・尺中と呼びます。
寸、関、尺と略して言うこともあります。
そのひとつひとつ、あるいは組み合わせでからだの様々な状態を見ることができます。
脈を診て確認できる代表的なことをいつくか挙げてみます。
五臓の状態
6つの場所の組み合わせで、肝・心・脾・肺・腎のどれが虚しているかをみることができます。
例えば肝虚と判断する場合、左関上と左尺中の脈が虚しています。
虚しているというのは、非常にざっくりいうと、力を感じない脈のことです。
この脈が確認できて、病症やお腹や顔色などの他の状態も合わせて勘案して最終的に肝虚証と判断することができます。
速さ
速い脈を数脈(さくみゃく)といい、一呼吸に6拍以上の拍動をしている脈です。
熱のあるときに出る脈状です。
遅い脈は遅脈といい、一呼吸で3拍以下の拍動をしている脈です。
遅い場合は冷えがあります。
浮沈
触れてすぐ感じ取れるのを浮脈といいます。
浮いていて力があれば表か腑に熱があります。風邪のひき始めなどにもみられます。
浮いていて力のないのは虚証の一種です。
沈んでいる脈というのは、あてた指を押し込んで(力を込めて)はじめて感じられる脈です。底まで押し込んで感じられるのは血の停滞などの実があります。
中ぐらいの位置でとれたら、わりといい脈です。
これら遅数浮沈の四脈が、代表的な脈状になります。
この4つの脈状の他にも、細くて強い(弦脈)とか、滑らかでしっかり(滑脈)とか、渋っている、細くて消えそう、ネギをつぶしたよう、とか30種類以上の脈の種類が古典には出てきます。
さらに、七死脈といって、死の間際にみられる脈についても記載があります。
脈でからだの状態をみるようになったのは、皇帝など身分の高い人のからだを診るのに、御簾の向こうからでも見れるようにという理由もあるようです。
かつての医師は、暗殺の疑いという命のリスクを背負いながらその職務を全うしました。
東洋医学が命がけで発展してきたことを考えると、からだと向き合うその真剣さがわかるというもの?です。