女性のための鍼灸院 すばるのブログ

横浜市港北区大倉山。静かな町の片隅にある鍼灸院です。鍼灸を通して、妊活、美容鍼、更年期などの女性のお悩みに取り組んでいます。

樹木希林さんを偲んで~映画「あん」感想

女優の樹木希林さんが亡くなってしまいました。

5月にNHKあさイチにゲスト出演されていたのを見ましたが、いつもと変わらないたたずまいで、闘病されているのにいつまでもあのままでいてくれるような気がしていました。

今年も出演されている映画が公開されていたりしていますが、2015年の「あん」という映画は印象的でした。

彼女の演技が素晴らしくて、静かな内容なのですが胸にせまる力強さを感じました。

 

これから追悼上映の予定もあるらしいので、見に行く予定の方はネタバレになります!ご注意ください。

 

永瀬正敏演じるどら焼き屋の雇われ店主千太郎のもとに、アルバイトを申し出る、樹木希林さん演じる徳江がやってきます。

あやしげなおばあさんの徳江に戸惑いつつも、押しきられるようにアルバイトとして受け入れる千太郎。

ところが徳江の作るあんこがおいしくて、どら焼き屋は大繁盛。

ここまではファンタジーなお話なんですが、このあとから、ストーリーに影が射し始めます。

徳江がハンセン病患者だったという噂が流れ、千太郎の雇い主が、店の継続に難色を示すようになるのですね。

浅田美代子が演じてるんですが、嫌な感じの役がほんと嫌なやつでうまいなと。

刑務所から出所してやっと得た仕事でもある千太郎は、結局逆らえず。

徳江は静かに店を去ります。

その後千太郎は、町外れにあるハンセン病の療養所に徳江を訪ねます。

千太郎は彼女の歩んできた人生を知り、その後ひとり独立してどら焼き屋を始める、というお話。

 

ハンセン病は隔離すべき感染などしないとして、らい防止法が廃止された後にもかかわらず、人々の心には亡霊のように差別意識が取り付いている。

差別自体あってはならないとはいえ、すでにそこには理由さえもない。

その事が重く衝撃的でした。

徳江さんのように、そんな理不尽をすべて受け止めて、静かに暮らしている人たちがいるということが、なんとも切ない思いにさせられます。

あんこのおいしさを認められ、お店を切り盛りした短い「自由」は、徳江にとってどんなものだったんだろうか。

千太郎は、世の中のはみ出し者としてどこか通じる思いがあったのか。

最後独立して「自由」に仕事を始める千太郎の姿に、見てるこちらは少し救われます。辛い終わりにならなくてよかった。

BGMも抑え気味で樹木希林さんの存在感が映画を引っ張っていますが、他の役者さんや東京郊外の少し田舎な町の風景の撮り方も素敵です。

また、希林さんのお孫さんも中学生のお客さん役で出演されていて、共演がほほえましいです。

そして見た後に、おいしいどら焼きが食べたくなります、必ず!

冷え性対策その2~からだを温める

不妊治療で大切な、冷えないからだ作り。

冷え性対策その1にて、からだを冷やさないためにどうしたらよいかを述べました。

続いては、からだの温め方について説明したいと思います。
 
からだを冷やさないことを実践しても、手足やおなかがいつも冷たい、という悩みもあるかと思います。
からだが温まりにくい状態になっている、いわゆる冷え性です。
 
からだを温めるには
血行をよくする
血液を温める
この2つがうまくいっていることが大事になります。
 
血行をよくするために、外側から熱を与えることがまずは手っ取り早いです。
収縮している血管を広げ、血行をよくします。
ストーブにあたる、お風呂に入るなど、からだの外側から温かくすれば血行はよくなっていきます。
でももっと大事なのは血液をきちんと温めることです。
以前も説明した通り、床暖房のように、血液がからだ中をめぐることでからだ全体が温められます。
ではそのためにできることはなんでしょうか?
 
運動する
筋肉はからだで一番熱を作り出している臓器です。
筋肉を収縮する時に熱がうまれる仕組みになっているためで、なにもしなくても姿勢の維持等でひとは常に筋肉を使っています。
それもあって必要な熱量は基本的に作り出されているのですが、冷え性の人は筋肉量が少なかったり、運動量が少なかったりして、十分産生されていないのです。
そのため、からだを温めるには、筋肉を動かすことが一番早くて確実です。
ヨガやストレッチなど、激しい運動でなくても筋肉を動かすことはできるので、できそうなことから始めてみましょう。
 
お風呂に入る
温かいお風呂にゆっくり浸かることで、温められた血液が全身をめぐります。
40~42度くらいの、気持ちよくゆっくり入っていられる温度がおすすめです。
熱すぎると表面だけが暑くなり、発汗が促進されてしまいますし、長く入っていられないのでからだの中まで温かくなりません。
これはシャワーも同じです。
 
温かい食事を摂る
 ほかほかご飯やお味噌汁など、温かい食事を摂りましょう。
胃腸が温められて内臓の血管を温めることで全身にその血液がめぐります。
消化活動は熱を産み出しますので、食べる行為そのものがからだを温めることにつながります。
お刺身や生野菜、冷たい飲み物はからだを温めるのには向いていません。
 
食材を選んで
塩分
塩分はからだを温める作用があります。
血液に水を引き込むので、血液量そのものが増えるためです。
 
ごはん
炭水化物はエネルギー源なので、からだを温めますが、炭水化物ならなんでもいい訳ではありません。
ブドウ糖などの単糖類はすぐ吸収されてしまうものではなく、ごはんやいも類などゆっくり消化されるものがよいです。
 
生姜について
からだを温めたいなら生姜とよくいわれますが、生姜は辛味ですので、発散作用があります。
熱源になるというより、ターボをかけるイメージで、もともとの熱を増やすのでなくて発汗の過程で血管を広げるため、摂りすぎには気をつけましょう。
調味料や薬味、隠し味として使うのがよいかと思います。
 
温めるときに気を付けたいのは、温めすぎて汗をかかないようにすることです。
汗はからだを冷やす作用です。
ぬくぬくと気持ちよいくらいの感じで、やりすぎないように気を付けてください。

めいぼ、めばちこ、ものもらい…に効くツボ!

この他にも、めぼ、めこじきなどという言い方もある、麦瘤腫という目にできるできもの。

まつ毛の毛根や目に油分を分泌しているマイボーム腺に細菌が感染し、腫れて膿がたまったものです。

目にできたニキビみたいなものですね。

これができると、目がごろごろしたり、かゆみが生じたりで大変不快です。

細菌感染なので、眼科に行くと抗生物質の薬を処方されることが多いかと思います。

このものもらいによく効くといわれているツボがあります。

大腸経という経絡上の「二間」です。

二間は五兪穴の栄穴が配されていまして、栄穴は熱に関係するので、腫れた熱を捌くのによいのかもしれません。

二間は、手の人差し指の親指側の付け根のところにあります。

指と手のひらの切り替わるところになります。

この病にはこのツボが効く、というとき、そういったツボを特効穴といいます。

自宅でツボ押し健康法などでよく紹介されることが多いです。

例えば胃痛には足三里などです。

 

治療の際ははりも使いますが、お灸がいいですね。

さらに、顔面の疾患全体的に使える「合谷」や皮膚病によい「曲池」を合わせて使うとさらに効果的かと思います。

いずれも手や腕のツボなので、自宅でせんねん灸など簡易的なお灸を使うことができます。

 

ものもらいができるのは、抵抗力が落ちていることが多いです。

抵抗力が落ちていると、細菌感染しやすくなるからです。

鍼灸院で治療する際は、そういったからだの状態も整えた上で特効穴を使い、その特有の効果がより発揮できるようにします。

 

麦瘤腫はものもらい、めばちこなど、15種類くらい呼び方があるそうです。

なぜ麦瘤腫に限ってこれだけの方言のバリエーションがあるのでしょうね。

にきびはにきびなのに。不思議です。 

鍼灸院ってどんなところ?鍼灸を知って活用しよう!

鍼灸院ってなじみがないし、どんなとき、どこにいけばいいのかわからない。

はりやお灸がからだに良さそうと思っていても、いざ鍼灸院に行こうと考えたとき、このようなお悩みがあると思います。

そこで今回は鍼灸院について説明してみたいと思います。

 

鍼灸とは

はり(鍼・針)やお灸を使って刺激を与え、からだの不調を取り除き、改善していく治療のことです。

鍼灸ってなんだろう? <鍼灸の歴史>|一般の方へ|社団法人 日本鍼灸師会

鍼灸治療を行うには、厚生労働省認可の養成学校(専門学校・大学)で所定の単位を取得して卒業しかつ国家試験に合格して得られる「はり師」「きゅう師」の資格が必要です。

(あはき法 第1条)

 

鍼灸治療の種類

鍼灸治療にも、やり方などの違いがいくつかあります。

また、繊細な技術の上に成り立つ施術なので、鍼灸師それぞれが身に付けたやり方の細かい違いがあります。

 

経絡治療

日本の伝統的な治療法にもとづくはりきゅうです。

治療体系は東洋医学の基礎となる中国の古典に基づきますが、江戸時代より日本独自の考え方も生まれ、それらは戦後にまとめあげられました。

方法や考え方の違いによりいくつかの流派もあります。

そのため、経絡治療学会にて勉強された方の鍼灸院などでは経絡治療と言ったり、東洋はり医学会にて勉強された方の鍼灸院では脉診流と言ったりします。

東洋医学の考え方に基づき、経穴(ツボ)を治療内容にもとづいて選んではりやお灸を施します。

なお、注射針や縫い針などの太い針を連想することを避けたいこともあり、「鍼」の漢字を使用していることがほとんどです。

 

特徴は

・部分的なケガや不調でも、全身を診る

・手首の脈やおなか、舌の状態を診て、からだの状態を見立てる

・髪の毛と同じくらいの細いはりを、鍼管という筒状のものに差し入れて使用する

・基本的にあまり深く(1cm以上)刺入しない

・院長が一人、夫婦で、など小規模な院が多い

となります。

使用するはりの数は様々です。

 

中医学(中国針灸)

中医学の考えにもとづいたはりきゅうです。

中国針灸も東洋医学の考え方にもとづいているのですが、病の見立て方などが異なります。

そのため結果的に使う経穴(ツボ)が同じものだったりすることもあります。

例えば、

ストレスで胃が痛くなった時の見立て方は

経絡治療→肝虚熱証で胃に熱が及んだため

中国針灸→肝火犯胃の状態になっている

となります。内容はだいたい同じです。

なお、中医学では「針」の漢字を用いることが多いです。中国本土ではこちらの感じが一般的なのかもしれません。

特徴は

・部分的なケガや不調でも全身を診る

・手首の脈や舌の状態を診て、からだの状態を見立てる(弁証という)

・日本のはりより太く長い針を、直接刺入する。(痛くはない)

・深く刺すことが多い

・得気という独特のズンと響く感じがするように刺す

・はりの数は多め

となります。

 

現代鍼灸

東洋医学的な考え方は用いず、またあまり経穴を意識することなく、筋肉に刺激を与えることを目的とした治療が多いです。

はりを目的の筋肉に刺して通電させ、パルスを送って伸縮させるなどの使い方もします。

特徴

・患部のみの部分的な治療が多い

・筋肉に刺入するため、深く刺す

・はりの太さは経絡治療と中国針灸の中間くらい

となります。

 

鍼灸治療を受けられるところ

鍼灸師は独立開業できますので、資格者があれば様々な施設で施術ができるため、治療を受けられるところはいつくかあります。

 

鍼灸

鍼灸院という場合は、ほとんどはりとお灸のみでの施術ですが、温熱器や吸い玉など様々な設備や道具を使って付随的な治療を行っている場合もあります。

 

鍼灸マッサージ院

鍼灸師の他「あんま指圧マッサージ師」という国家資格をもって治療に当たっている治療院です。

3つの資格を一人でもっている方、それぞれの資格をもった複数の従業員のいる院があります。

ここでの鍼灸の治療のタイプは様々です。

 

鍼灸整骨院

鍼灸師の他「柔道整復師」という国家資格をもって治療に当たっている治療院です。

上記と同じく、3つの資格を一人でもっている方、それぞれの資格をもった複数の従業員のいる院があります。

鍼灸のタイプは現代鍼灸が多いようですが、鍼灸治療は鍼灸師が単独で別にコースを持っているところもあります。

 

中国針灸院

中国針灸のやり方の治療院です。

吸い玉などの治療も併用している場合があります。

 

その他

整形外科、美容サロン、リハビリ施設などでも鍼灸治療を行っているところがあります。

 

同じ鍼灸院でもいろいろなタイプがあります。

ご自分にあった治療院をみつけるのにお役立ていただければさいわいです。

 

subaruhari9.hatenablog.com

 

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優柔不断も鍼灸で治る?!

みんなで食事に行ったときになかなか食べたいものを選べない。
旅行で行きたいところを絞れない。
あれでよかったのか過去のことを振り返る…

こんな人がいたら、優柔不断だなぁーと思うでしょう。

 
【優柔不断】ぐずぐずして物事の決断のにぶい・こと(さま)。(三省堂 大辞林
 
辞書なだけに直球ですが、、なかなかすぐに決められないという人やその様子のことを表した言葉です。
 
優柔不断に陥ってしまうのは、つねに何がベストチョイスなのかを考えてしまうという思考があるからです。
それを反対から言えば、臆病ということになります。
ベストな選択をしないといけない、という不安が、その裏にある訳です。
なんでもいいんじゃない。
決めたいんだけど、決められない。
どうしてそのような心理状態になるのでしょうか?
 
東洋医学では、肝・胆というところが、決断する力を担っています。
肝と胆は陰陽の関係で、つながりの強い臓腑です。
「素問」という古典では、
 
肝は将軍の官。謀慮これより出づ
胆は中正の官。決断これより出づ
 
という記述があり、将軍である肝が作戦を考え、胆がブレのないスタンスで決断をする、としています。
つまり肝・胆がしっかりしていれば、迷いなくてきぱきと物事を処理することができるのです。
肝はまた、「血を蔵する」という仕事を持っています。
適切な量の血を蓄え、適切な場所に配分して、いつもからだがきちんと働くように管理しています。
どういうことかというと、
日中は脳や手足に血を巡らせ、スムーズに活動できるようにします。
夜中は肝に血を戻し、睡眠状態に移行することで、活動で消耗した脳や手足を休めます。消耗した分は脾から血を取り込み、安定的な貯蔵量を確保して翌日に備えます。
このように肝がきちんと働いていることで、滞りなく活動ができるのです。
 
ところが、仕事や運動など日中の活動をしすぎたり、ストレスで血を過度に消耗すると、肝を弱らせてしまいます。
そうすると肝の特徴であるスムーズに物事を運ぶ能力が損なわれ、活動に支障がでてしまうのです。
肝がきちんと働いていないと、筋肉がひきつってうまく動かなくなったり、頭痛やめまいを起こしたり、月経不順や痛みが出たりします。
精神面でも、物事がスムーズにすすまないのでイライラするようになります。イライラするほど熱量がない場合、決断力が鈍るのです。
 
生理前に、普段はそうでもないのにイライラしたり、優柔不断になっていること、ないでしょうか。
これも子宮に血が集まることで肝虚の状態になっているから起きるのです。
 
そのため、肝虚証の状態を鍼灸治療でよくしてあげると、もとの決断力ある自分を取り戻すことができます。
また、性格的に優柔不断があるような方は、もともと肝が弱りやすい体質であると言えます。
肝が弱ってどこかに不調が出るようなときは治療で補えばよいのですが、体質なので、もとから治そうとするよりは、そういう傾向にあるんだなと考えて受け入れることが大事です。
そうすることで、自分をコントロールできるようになるのではないでしょうか。
例えば、なにかを選ばなきゃいけない時は好きな色で選ぼうとか決めておくなどしておけば、決められずに落ち込んだりすることも少なくなると思います。
 
鍼灸治療を受けることで、体質的な傾向もみえてきます。
そうすればむやみに悩むようなことも、少なくなるかもしれませんね。

円形脱毛を見つけたら、自分に優しく。

コインくらいの大きさの脱毛を、ある日突如発見する。

場所によっては美容師さんに指摘されて初めて気づくこともあります。

円形脱毛症は、原因不明とされていきましたが、現在は自己免疫の異常によるという説が有力とされています。

他にも甲状腺の病気がもとにあったり、遺伝が示唆されたりもしていますが、原因の特定はまだされていないようです。

一時的な脱毛症は、ストレスのことが多いですが、特に心当たりなく発生することもあります。

 

この円形脱毛症ですが、鍼灸での治療でよくなることが多い症状です。

本来生えている毛髪が抜けるということは、頭皮だけが問題なのではありません。

からだの中でのなんらかのバランスが崩れているから、毛根の働きがうまくいかなくなると考えられます。

 

東洋医学からみた円形脱毛症は、血の不足が原因です。

髪は血の余りと言われています。

(なお、爪は筋の余り、歯は骨の余りです。)

血は血液の意味だけでなく、潤いや栄養を全身にもたらすものと考えますので、脱毛に限らず毛が細い、薄い、ぼこぼこしているなどの髪の異常は、血が十分にめぐっていないために起こります。

 

また、過度のストレスは血を消耗するので、ストレスが円形脱毛症の原因となるということも、東洋医学の考え方では自然です。

治療においても、円形脱毛症になった方は、やはりストレスに対して心当たりがある場合が多いように思います。

 

血は全身をめぐっていて全身で必要とされていますので、血の不足が円形脱毛として現れるか、他の場所で違う症状として現れるかは体質などによるのだと思います。

誰にでも他より少し弱いところはあります。

それはからだからのSOSが出やすい場所、からだのクセのようなものと考えることができるのではないでしょうか。

円形脱毛をみつけたときはショックかと思いますが、脱毛だけを治そうとするのではなく、ぜひからだ全体をケアすることを考えてほしいです。

鍼灸治療では、そうしたからだのバランスの乱れを整えたり、心身をリラックスさせることが可能です。

それと同時に、脱毛部分には直接はりやお灸を施して、発毛を促す治療も行いますので、自然に生えてくるのを待つより早く回復します。

 

血が不足するのは証でいうところの肝虚証になっていることが多いのですが、肝虚証になりやすいタイプの人は、完璧主義だったり、根を詰めて仕事してしまう方が多いです。

自分のからだは、自分の最高の味方です。

どうか優しくしてあげてくださいね。 

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スピッツのこの歌詞が好き3~ランプ

「ランプ」はスピッツの2013年9月発売の「小さな生き物」というアルバムに入っている曲です。

 

小さな生き物

小さな生き物

 

 

アルバム製作の時期が東日本大震災の後だったため、その影響を受けた作品になっているといわれています。

スピッツは楽曲の解釈を聴く側に委ねている姿勢をとっているので、その事に関してはわりと否定的なコメントをしています。

でもやはり感受性豊かなアーティストが、その事に対し全く無関係で作品をつくることはないのではないでしょうか。

アルバムを通して聴くと、やはり災害に対する無力感、人災に対する怒り、亡くなった方たちへの鎮魂、そんな状況下で生きていこうとする人たちへの温かい目線を感じずにはいられません。

で、この「ランプ」という曲ですが、震災というか原発事故で生活が一変してしまった人を歌っているのかな、と勝手に解釈しています。

 

1番歌詞↓

ただ信じてたんだ無邪気に ランプの下で

人は皆もっと自由にいられるものだと

傷つけられず静かに食べる分だけ

耕すような生活は 指で消えた

 

取り残されるのは 望むところなんだけど

それでも立っている理由が あとひとつ

 

あなたに会いたいから どれほど遠くまででも

歩いていくよ 命が灯ってる限り

 

無邪気に、という言葉に自嘲的な響きを感じます。

何も知らないで、というような。

ランプは電気の比喩と考えると、電気が通っていて明かりがつくなんて当たり前すぎて、そのベースにあるものなんて考えてもいなかった。

その下で過ごす、自分達の生活を賄うくらいのささやかな田舎生活。

そしてそれは“指で消えた”と。

無邪気やランプの言葉の選び方もうまいですが、この表現、この短い一言で何が起きたか表してしまうなんて…。

自然に壊されたのではなくて、指で、なんですよね。

そして、消えたという言葉の、怖いくらいのあっけなさ。

人災ってことだけじゃなく、感情もなく、指先でピンっと近くにあった消ゴムかなにかを弾き飛ばすような軽い無責任さも感じさせます。

そしてその事に対する静かな怒りも。

 

一緒に暮らしていたであろう「あなた」は、もういないのだろうと思います。

だけど恥ずかしくない自分で(あの世で)会いたいから、どんなにつらくても命の限り生きていくという、力強い決意。

ランプは電気の象徴でもあり、命の灯の意味でもある。

勝手にそう解釈してるだけなんですが、涙が出そうな歌なのです。。

 

2番の歌詞では、ビルの谷間から空を見上げるという描写があるのですが、「食べる分だけ耕すような生活」をしてたのに、今は都会にいるのか、と思うとこれまた切なくて。

 

直接的な言葉を何一つ使わなくても、使わないからこそ伝えられるものがあるのだなと、思いますね。

メロディーも優しく暖かく、でも少し寂しくて、美しいのです。

 

スピッツの曲は聴くとなんとなく落ち着きます。

きっとそれは、こんな風にいろんな思いをのせて作っているからなのではないかと思っています。