きちんとごはん、食べていますか?
先日の献血での血液検査の結果が出ていました。
基準値を外れてるマークがなくてほっとしていたのですが、よく見ると、アルブミンや総蛋白の値が下限ギリギリでした。
たんぱく質が少ない、、栄養不足の傾向?!
そうかもしれないんですが、いつも低めなんですよね。。
それで、先日NHK「あさイチ」で女性の新型栄養失調の特集をやっていたことを思い出しました。
ちょっと、他人ごとではないかも?
↑このサイトでは、対策(食生活の改善)にフォーカスしていますが、番組では、栄養失調とされていた女性3名の具体例が再現VTRで紹介されていました。
カルシウム不足の例
胸の痛みで病院を受診した女性。
検査の結果、肋軟骨の石灰化が起こっていました。
本来骨にならないところが石灰化してしまっていたのです。
カルシウムが足りなくて、骨からどんどん溶出していったことが原因とのことで、骨粗鬆症にもつながるとのこと。
たんぱく質、鉄の不足の例
体力がなく、めまいなどで子育てもままならないという女性は、検査の結果たんぱく質と鉄分が不足していました。
おかずをバランスよく何品も作っているのになぜ栄養が足りなかったのか?
それは子どもに食事させることを優先して、気づけば自分はほんのちょっとずつしか食べていなかった。つまり食事の量全体が少なかったことによるものだそうです。
糖分(炭水化物)を過剰摂取していた例
不妊に悩んでいた女性。
甘いものが好きで、パンやパスタでおなかを満たすことも多い食生活でした。
カロリーは十分すぎるほどでしたが、鉄分や亜鉛は足りていなかったのです。
さらに糖とたんぱく質が結合した物質が卵巣に悪影響を及ぼしていたとのこと。
食生活を改善した結果もあってか、妊娠されたそうです。
ちょっと例が極端な気もしながら見ていたんですが、大なり小なり誰にでも起こりうることではあります。
現在の日本は、おなかを満たすだけなら、すぐに食べられる食品がたくさんあります。
パンやお菓子は買ったらすぐ食べられますし、外食もできるし、お弁当もお惣菜もどこでも売っています。
でもそれらはよく見ると、手間のかかるおかずの少ないことに気が付きます。
それはたんぱく質ですね。
肉や魚は、基本的に煮たり焼いたり、調理をしないとおかずになりません。
お刺身やハムばかり食べる訳にもいかないですし。
お惣菜も、十分な量を買って帰るとなると、かなりの費用がかかるはずです。
ごはん一杯食べるくらいのおかずがあればいいか、と思うと本当に必要な量が足りていないことが多いのではないでしょうか。
そして、カルシウムや亜鉛、鉄分も、肉や魚介類に多く含まれています。
簡単な食事を続けていると、これらの栄養素が不足してしまう訳なんですね。
ではサプリで摂ればよいのか?とも考えてしまうかもしれませんが、サプリは単体で摂るので一度にたくさん体内に入るため、一気に消化管を通過するのでそれほど吸収されないともいわれています。
また、一度に一種類の栄養素が大量に体内に入ると、それを処理する肝臓に負担がかかります。
医薬品はどのくらい吸収され、どのくらい肝臓で代謝されるかなどがよく検証されてから製品化されます。サプリは医薬品ではないので、体内での吸収率についてなど、きちんとデータを取っていない場合も多いのではないでしょうか。
栄養素は食事としてゆっくり消化していく中で吸収されるのが、からだにも負担にならないと思います。
調理は忙しいと面倒なことも多いですが、ちょっと鰹節を振りかける、納豆や冷ややっこなどを一品足すなどして、おかずの種類を多くするよう、工夫してみてはいかがでしょうか?
こちらもご参考に↓
冷え性対策その1~からだを冷やさない
不妊治療で大事なことの一つに、からだを冷やさないことが挙げられます。
冷えがからだに入ると、血行が悪くなったりすることで、本来の機能が十分発揮されない状態を作ってしまうからです。
子宮や卵巣はたくさんの血流量が必要とされる臓器であるため、冷えの影響を受けやすいということができます。
実際、エアコンが効きすぎる部屋で座ったまま動かないでパソコンに向かうといった職場環境にいると生理痛がひどくなった、などとという経験は、多くの方がされているのではないでしょうか。
今回はからだを冷やさないためにはどうしたらよいか?対策を考えていきたいと思います。
---Contents---
からだを冷やさないとはどういうことか
以前のブログでも説明しましたが、からだを冷やさないということは、からだの熱を奪われないようにするということです。
手足が冷やされると、そこを通る血液が冷やされます。
それが体内に戻ることで、体の中を冷やします。
外側からの冷え対策
風に肌をさらさない
からだは常に熱を発することで、簡単にからだが冷えないようにガードしています。
発せられた熱が体表面の体毛の間にたまっている空気層を温めて、からだを覆っているのです。
からだを冷やさないためには、この空気層を保つ必要があります。
風が当たってひんやり感じるのは、風でこの空気層が吹き飛ばされるからです。
直接肌に風が当たらないよう、長袖の服を着たり、ストール、腹巻、靴下などを身に着ける習慣をつけましょう。
冬以外は汗をかかない程度の、薄手のものでよいのです。
アンクル丈のジーンズなどおしゃれですが、妊活中は我慢です。
汗をかいたままにしない
発汗は、水が蒸発するときに熱を奪う気化熱の原理により、からだの熱を下げようとする働きです。
おなかが冷えないようにとがっつり腹巻をしても、汗ばんでしまっては本末転倒になってしまいます。
先ほど薄手のものでよいとお話ししたのはこの理由によるものです。
かいた汗はこまめに拭き、濡れた下着などはそのまま乾くのを待たず着替えた方がよいです。
内側からの冷え対策
食べ物や飲み物でも、からだを冷やしてしまうことがあります。
これにはふたつの側面があります。
冷たいものを食べない
おなかの弱い人は身に染みて理解していると思いますが、冷たい飲食に胃腸は敏感ですよね。
約37℃で保たれている内臓に、10℃かそこらの冷たい液体や固体が大量に流入する訳です。
口に入れた時に冷たーいと思ったその感覚は、当然内臓も感じています。
内臓の働きは弱くなり、内臓に流入している血液は冷やされ、冷たい液体を体温まで温めなければならないために余計なエネルギーを消費します。
もしおなかを壊して下痢すると、大量の水分が奪われることでまたからだが冷えます。
冷たいものの飲食は、からだを温めたい人にとってはいいことありません。
からだを冷やす食品を避ける
薬膳の考え方にもありますが、からだを冷やすとされる食べ物があります。
水分の多いもの、カリウムを多く含むもの、苦いものなどです。
夏野菜などは、この3つの条件を満たしていることが多いです。
果物も、苦くはないですが、カリウムは多い傾向です。
カリウムはナトリウムと拮抗して体内に存在しており、ナトリウムを排出させる働きがあります。
ナトリウムは体内に水を引き込む、つまりナトリウム摂取量が多いとその濃度を保とうとして血中水分量が増えるようになります。
高血圧予防のために塩分をセーブするのは、ナトリウム摂取を控えることで血液量を増やさないようにするためです。
カリウムはその反対に、ナトリウムを排出させるために利尿作用を持ちます。
からだから水分が失われるということは、冷えにつながります。
それでカリウムを多く含む食品はからだを冷やすという訳です。
夏は暑いですから、からだから余計な熱を排出しないといけないので、まったくこれらのものを食べないという訳にはいきません。
季節のものを食べることは養生の上では大事なことです。
そこで、調理で工夫するのがよいと思います。
炒めたり煮たりしてこれらの野菜から水分を抜いたり、塩分を追加してカリウムとバランスを取ったりすることができるからです。
冷え性対策の第一歩、からだを冷やさない、いかがでしたでしょうか?
できそうなことから、トライしてみていただけばと思います。
冷えないからだは気持ちいいので、大変そうに見えて案外すんなりとできるかも、です。
いわさきちひろ展
今日は少し早じまいをして、東京ステーションギャラリーで開催している「いわさきちひろ展」に行ってきました。
今日までだっていうので、行けそうならと。
「窓際のトットちゃん」の表紙で有名ですが、どんな方か知らなかったのでいろいろ意外なことも知ることができて楽しかったです。
いわさきちひろの絵といえば、美しい色づかいの水彩画で知られていると思うんですが、そういう画風にたどり着いたのは、晩年の10年足らずの短い時期だったとか。
55歳の若さで亡くなっていたとか。
左利きだったとか。
印象的だったのは、ルーブル美術館を訪れた時にスケッチした「サモトラケのニケ」の写生。
細かく書き写したのではなく、ささっと鉛筆で必要最小限の線だけで描いているのに、カッコよく、彼女らしい絵にもなっていて、すごく素敵でした。
デッサン力、すごいです。
かわいい絵を丁寧に描いているように見えますが、それだけでなく線をそぎとす感じとか、構成力とか、一流のイラストレーターでもあるんだなと。
もう少し長く存命でいたら、幅広い仕事もあっただろうなと思います。
それから、線が柔らかくてやさしい。
赤ちゃんのからだや、子供の手の指、どれも触りたいくらいで。
全体の温かい空気はそういうところからきているんだな。と思ったりしました。
美術展としては、晩年のかわいい水彩画をもう少し多く展示してほしかったけど、見たかったらちひろ美術館に行くべきなのかもです。
この秋は他にも見たい美術展がいくつかあるので、時間作って後悔のないようにしたいと思います。
あれ終わっちゃったのかー☀️😵💦って時々やってしまうのでね、気を付けないと。
疲れが取れない、という病気がある
先日、慢性疲労症候群の方やその家族の方が体験を語り合う会が開かれたとのニュースがありました。
慢性疲労症候群とは、検査で異常がないのに激しい疲労感に襲われ、日常生活もままならなくなる病気です。
疲労感は仕事や運動など、からだを酷使した後に感じるからだを動かすのがしんどい感覚をいいますが、慢性疲労症候群はそういった疲労感をもたらす原因がないのに発生するところが通常の疲労感とは違います。
仕事や通学にも支障が出る場合もありますが、周囲の理解が不足しているために「怠けている」などと誤解をされやすい病気でもあります。
実際疲労していないのだから、別な名称があってもいいような気がします。
病気として認知されたのは比較的新しく、病名が付いたのは1988年とのこと。
原因は今のところ確定したものがなく、研究途上の段階です。
これとイコールと考えるのは早計かもしれませんが、鍼灸の古典である「素問」「霊枢」には、解えき(にんべんに亦)、体惰という病名で記載があり、古くから病気として認識されていたようです。
東洋医学的にこの病気について考えると、脾虚か腎虚の寒証になります。
手足を動かすのがつらい、だるいのは四肢を支配する脾が虚している特徴であり、身重も脾が関係しています。また、脾が虚すと腎も虚すという関係性があるので、腎虚に発展する場合も考えられるというわけです。
疲労感をもたらす原因として
①夏の暑さ
②夏の湿気
③出血(けが、出産、月経など)
④心労、驚いたり怖い目に遭ったりすること(精神的ストレス)
⑤慢性疾患、加齢、過房
⑥労倦(仕事のし過ぎ)、先天的な虚弱体質、偏った食生活
が挙げられます。
それがからだにどのように影響するかというと
①は気と津液を消耗する
②と⑥は痰湿といって余分な水分をからだに停滞させてしまう
③と④は気と血を消耗する
⑤は腎精が失われる
このように、慢性疲労症候群と病名がつくほどでなくても、なかなか疲れが取れない、という症状が続いている場合、鍼灸も治療の選択の一つになりえます。
慢性的な症状は治療も長くなることが多いですが、少しずつよくなっていけば気持ちも前向きになります。
「スポーツの秋」には理由があった!秋は体を動かそう。
9月になってもまだ暑い日が続きますが、朝晩の気温や風の感じは、夏とは違って気持ちよくなってきています。
気づけば日差しも弱くなってるし、暗くなるのが早い。
秋が来ていますね。
秋は五臓では「肺」が配当されてます。
西洋医学の肺は呼吸器の機能をもつ臓器ですが、東洋医学は臓器を指すのではなくて、機能そのものを「肺」という言葉で示しています。
「肺」の仕事は気を体中に巡らすこと、体表面をガードすること、汗の調整をして体温を維持することなどがあります。
また、支配域は肺だけでなく鼻、気管支、皮膚、大腸など、外気と接する体表面に関係するところになります。
大腸はなぜ?と思いますが、消化管のなかで一番外に近いからです。
だんだん下がってくる気温からからだを守るため、また冬の寒さに対応するからだにするため、秋には「肺」が活躍します。
「肺」は体内での働きは粛降といって引き締める、下に向かう力をもっていますが、からだから外に対しては、宣発作用といって、発散させる作用があります。
たとえば汗をかいて熱を逃がすとか、息を吐く(呼気)働きです。
秋は五味では「辛」が配当されていますが、辛みは発汗作用があり、「肺」の宣発作用を助けてくれます。
でも、これから寒くなる秋に、なぜ敢えて汗をかく作用が必要なのか。
それは、夏の間に体に残った余分な熱を発散するためです。
からだに熱が残っていると、秋の五邪である「燥」を助長してしまい、「肺」が乾燥しやすくなってしまいます。
「肺」の支配域が乾燥しやすくなる=鼻やのどを傷めやすくしてしまうということです。
また、冬に余計な汗をかいてからだを冷やすことがないようにするためでもあります。
木が葉を落とすように、冬は余計なエネルギーを消費するものはなるべく持っていない方がよいのですね。
そのため、秋には運動をして汗をかくのがよいとされます。
秋は日も短くなってきますので、一日中運動しすぎることもありません。
外で運動するにはもう寒いかな、となったら冬に備えておとなしく過ごすように切り替えるタイミングです。
ここで冬も動き回ってエネルギーを消費しすぎると、春に思うように動くことができず、五月病になりやすくなったりします。
季節にあわせて無理なく過ごすのが、養生の基本なんですね。
産後うつは他人事ではない
昨日のニュースで、出産後1年以内の女性の死亡原因の1位が自殺だとのニュースが報じられていました。
30代の死因の1位が自殺ではあるのですが、産後うつの可能性は否定できないと思います。
産後うつの原因は、ホルモンバランスの急激な変化、孤立した環境下での育児、睡眠不足、育児に対する責任感などと考えられていますが、もともとの性格や妊娠中の状況など様々な要因があると言われています。
産後うつの怖いところは、劇症(灸で激しい症状)で現れるところです。
当院にも産後うつの患者さんがいらしたことがありましたが、妊娠中はむしろメンタルがしっかりしていたのに、出産後2週間を過ぎたころから急に不安がこみ上げてきたと話されていました。
さて、産後うつは東洋医学的に考えると、決して珍しいことではなく、むしろ誰にあっても全然おかしくない症状です。
血を消耗している
生きていくのに必要なからだを巡る成分に、気・血・津液というものがあります。
妊娠中は胎児を養うため血が消耗しますが、出産での出血でも血が失われます。
さらに母乳も血が変化したものなので、授乳で血が消耗されます。
また、赤ちゃんから目が離せないという常時緊張した状態も血を使います。
妊娠から出産後にかけて、継続的に激しく血を消耗している状態なので、からだを支えるシステム(肝・心・脾・肺・腎)のうち、血を司っている肝が虚します(肝虚証)。
睡眠不足は陰(からだを鎮める作用)を傷つけるので、陰虚も加速しますから、肝虚と合わせてイライラや便秘、頭痛、肩こり、なども出てきます。そうして熱も少なくなると肝虚寒証になり、うつ傾向になります。
腎虚になっている
腎は生殖機能を司っているために、妊娠出産で虚しやすいです。
さらに、腎の働きの一つである、体に必要なものを引き締めて維持する機能がありますが、出産はあえてこの機能が緩み、腎虚の状態になります。
そうすることで胎内にとどまっていた赤ちゃんが出産されるようになります。(腎虚にならないと難産になります。)
しかし腎虚が回復しないと、出血や尿漏れ、脱毛などが起こりやすくなります。
腎は津液を必要としますが、腎虚になることで津液も消耗され熱が発生しやすくなりますので、不眠やだるさなどが出やすくなります。
また腎は心との関係が深いので、動悸や不整脈、精神状態に影響があります。
陰虚から陽虚へ
肝や腎が虚すことで、始めは陰(血も陰に属す)が消耗されて、相対的に熱が多くなり虚熱が発生します。しかし血はそれ自体熱を持っているので、血が激しく失われていることで陽(からだを温める作用)も少なくなります。
そうすると次第に寒証(陽虚証)に傾き、陰も陽も虚した状態になってしまいます。
すべての陽がなくなる=死なので、最後の砦の心には熱が残りますが、心にだけ熱が残るというアンバランスな状態が、心の支配する精神状態に影響してしまいます。
もともとの体力、体質、年齢の差はありますが、これだけのことが出産を機に急激に起こるので、産後はかなり丁寧な養生が必要な時期といえます。
ただでさえ心身を回復させなければならない時期に、新生児のお世話を24時間しなくてはいけない。
そのことがからだにとって如何に異常な状況下にあるか。
妊娠出産は病気ではないなんて言われ方もありますが、そう思って普通の生活をしようとすると、自分が産後うつだと自覚する間もなく、症状が悪化する恐れがあります。
自分は大丈夫だろうと思わず、出産前から起こりうることとしてパートナーと話し合っておいたり、サポート体制を考えておくことが大事ではないかと思います。
鍼灸治療も力になれるので、選択肢の一つに考えておいていただけたらうれしいです。
スピッツのこの歌詞が好き2~みなと
「みなと」は2016年4月にリリースされたスピッツの41枚目のシングル曲です。
最新アルバム「醒めない」に収録されています。
もう2年以上経ってしまったのか。。
スピッツの曲といえばちょっと意味わからん…という歌詞も多い中、わりとみなとはイメージしやすい方と思います。
恋人との別れとも生と死とも解釈はできますが、自分はこの歌は、亡くした友人を思いながら今を生きている“僕”を歌っているのかなと解釈して聴いています。みなとという言葉からイメージできるそれは、やはり津波によってかと。
一番の歌詞:
“ふねに乗る訳じゃなく だけど僕はみなとにいる
知らない人だらけの隙間に立ち止まる”
“遠くに旅だった君に 届けたい言葉集めて
縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて”
“汚れてる野良猫にも いつしかやさしくなるユニバース
たそがれに あの日二人で 眺めた謎の光思い出す”
“君ともう一度会うために作った歌さ
今日も歌う 錆びたみなとで”
以下、わたし勝手解釈↓
震災で環境が変わってしまった生活に疲れたとき、“僕”は彼がいってしまった海ーみなとに向かう。
彼の不在が受け入れがたく、また会うことを信じて、いろんな思いをのせて一生懸命作った歌を歌いに行く。
ひとりぼっちになってしまった“僕”を、まわりのみんなは優しくしてくれたよ。
歌いながら、幼い頃裏山で遊んだ夕暮れの帰り道、UFOみたいな不可解な光(今思うと飛行機か何かかもしれないけど)を見て、二人で怖くなったことなどを思い出したりしている。
ああ今日もみなとに来てしまった。
この錆びたみなとに。
2番の歌詞:
“勇気が出ないときもあり そして僕はみなとにいる
消えそうな綿雲の意味を考える”
“遠くに旅だった君の 証拠も徐々にぼやけ始めて
目を閉じてゼロから百までやり直す”
“すれ違う微笑みたち
己もああなれると信じてた”
“朝焼けがちゃちな二人を染めてた
あくびして走り出す”
“君ともう一度会うための大事な歌さ
今日も歌う ひとりみなとで”
以下、わたし勝手解釈↓
もっとしっかりやらなきゃと思うけど、やっぱりみなとにきてしまう。
ぼんやり空を眺めていると雲が少しずつ形を変えて流れていく。
消えてしまいそうな雲、、本当に君はもういないのか?
そんなことを思う一方で、君の記憶が少しずつあいまいになっていく。
ひとつずつ思い出さなければ、あの雲のように消えていってしまいそうなほどに。
前を見て新しい生活を建て直し、また楽しいこともあるだろうと思っていたのになぁ。
ああそういえば若い頃、朝まで遊んで眠くなって、みんなが起きる前にあわてて走って帰ったこともあったね。
僕はやっぱりまだ信じられないんだ、君がもういないなんて。
この歌を歌いながら、ひとり、待っている。
帰ってこない友人を思いながらしかし、この歌に歌われているのは、なかなか前に進めない“僕”自身の姿ではないかと思っています。
震災の復興に向けて頑張るまわりの人たちにどこかついていけず、所在なさや後ろめたさを感じている“僕”は、みなとにきて友人を思いながら歌を歌うことでそんな自分と折り合いをつけている。
けれど、時の流れは友人の記憶を少しずつ奪っていく。
きっともう自分も前を向かなければならないのはわかっている。
そんな“僕”を象徴しているのが「錆びたみなと」という歌詞の一節です。
ここで出てくるみなとは、大規模に改修されることなく震災前の姿を残している。
時が止まったかのように見えるけど、でも確実に時間は経過している。
このみなとは、そのままこころを震災前に残したままの“僕”の姿に重なります。
それが「錆びた」という言葉に集約されているんじゃないかと。
言葉の選び方、ほんと素晴らしいなと、しみじみ思うわけです。
そしてこんな目線で歌を作ることに、マサムネさんらしさを感じます。
励ましたり、応援したりとかじゃなくて、はなし聞いてるのかどうかわかんないような顔しながらも、ずっとそばにいてくれる友達みたいな。
こういうところが、やっぱりスピッツいいなと思うところなんですよね。
歌詞についてばかり書いてしまいましたけど、マサムネさんの歌声が透き通るようにきれいで、メロディーもシンプルでありながら美しくて、そうかと思うとベースラインの音数が多くてそれが曲に深みを与えていて、ギターも特徴的なグレッチの音色がすごく合っていて…この辺で。
名曲!