東洋医学ではからだをどうみているのか3~寒熱
これまで、からだを冷やすのはよくないよ、とかからだを温めるのに大事なこととか、「冷え」を悪者のように書いてきました。
しかし、「熱」も様々な病気のもとになります。
陰陽のバランスの乱れによって冷えたり熱がこもったりする訳で、それが症状として現れると病変として自覚されます。
冷えも熱もちょうどよい状態を保つのは事実上無理で、冷え傾向だけど特に問題なく過ごせていればそれも体質のひとつであり、病気ではありません。
要するにバランスの乱れといっても程度問題なんですね。
陰陽については、この記事をご参照ください。↓
なので、そのバランスが傾いたときにどのような病変となるかを把握しておくと、どういう状態なのかを理解しやすくなるかと思います。
陰と陽はからだの中で、陽が活動のエネルギーを作り出し、陰はそれを冷ます働きがあります。
エンジンと、冷却水及びラジエーターのような関係ですね。
実際ひとのからだは常に余剰な熱を産生しており、その熱を発散すべく汗をかいたりなど熱を逃がす機能が備わっています。
そのからだの冷却機能が停止したのが熱中症で、そうなると熱が旺盛になり過ぎて死亡してしまいます。
逆に、寒冷な環境下に長時間いると低体温症といった状態になり、熱が少なくなりすぎても死亡のリスクがあります。
これほど極端なことは特殊な条件下でしか起きませんが、この寒熱のバランスの乱れにより、様々な症状が現れます。
東洋医学では、病気をみるときにその偏りを重要視します。
熱が多い場合
仕事や運動をし過ぎたりして活動が過多になると、活動のために陽気は盛んになって、その分陰気が消耗され、からだの中に熱が多くなります。
からだに熱が多くなると、熱の上昇する性質上、からだの上の方に症状が出やすくなります。
熱が多くて出る症状には、
- 頭痛
- 肩こり
- めまい
- 動悸
- 不眠
- 歯痛
- 咳、のどの痛み
- 耳鳴り
- 口内炎
- イライラ
- 食欲亢進(→肥満)
- 胃痛
などがあります。
またどの経絡に熱が波及するかによって、からだの上の方ばかりではなく、様々なところに症状が出ることもあります。
- 手足のほてり
- 便秘
- 各種皮膚病
- 膀胱炎
- 腰痛
- 膝痛
- 痔
などが挙げられるでしょうか。
陰が虚した症状なので、陰虚証といいます。
陰が虚すということは、五臓のどれかに虚があると考えます。
どの臓が虚しているのかによって、肝虚陰虚証(肝虚熱証)とか腎虚陰虚証(腎虚熱証)というような証立てになります。
冷えている場合
陰虚の状態が続くと、結局陽も使い果たされて減っていき、からだは冷えていきます。
働き過ぎてなお頑張り続けるうちにその元気もなくなり、うつっぽくなって引きこもってしまったりするように、いずれは活動ができなくなるのです。
つまり陰も陽もなくなっていくのが冷えで、陽が虚すので陽虚といいます。
この場合の症状は全身にでます。
- 元気がない
- 疲れやすい
- ため息
- 立ちくらみ
- 手足の冷え
- 風邪をひきやすい
- 不正出血
- 胃腸虚弱
- 食欲がなくなる
- 下痢
- 口に唾液が溜まる
- 何もしないのに汗をかく
- 性欲減退
などがあります。
また、陽虚までいかなくても部分的に冷えているという場合は多いです。
その場合は冷えているところに症状が出ます。
- 関節痛
- 神経痛
- 腰痛
- 頭痛
- 咳
- 腹痛
などです。
虚している臓によって、脾虚陽虚証(脾虚寒証)とか、肺虚陽虚証(肺虚寒証)とか言います。
陰虚証で単純な機序の場合は、余計な熱をさばくことで症状の改善がみられますが、原因が複数の臓からきていたり、寒証全般はよくしていくのに時間がかかります。
特に寒証は、ただ温めればよいのではなく、陽というエネルギーを作り出すところから治していかなければならないからです。
高齢者の冷えは、加齢によってその働きが衰えているので治りにくいですし、出産などで血を失ったことから陽虚証になっている場合は、血を増やしていかないと治りません。
同じ頭痛でも、一回の治療でスッキリする場合と、なかなか治らず繰り返してまうのには、このような原因の違いがあるのですね。
寒熱いずれの場合でも慢性化すると治りにくくなりますので、からだの不調を感じている時は、早めにケアを考えてみていただきたいと思います。