立春が過ぎました。
2月3日は節分で、4日は立春でした。
豆まきは以前からありましたが、恵方巻は最近広まった感じですね。
太巻きはお昼ご飯などにちょうどよいから、ニーズにマッチしたのかもしれませんが。
立春、立夏、立秋、立冬、二十四節気ではすべての季節の始まりがありますが、立春だけ現在はその前日を節分といいます。
これには特別な意味があります。
立春の節分とは古くはお正月のことです。
年賀状に「迎春」とか「初春」とか書くことがありますが、冬のさなかに春っておかしいですよね。
本来は節分が正月にあたるため、その日から春なので、「迎春」とか「初春」を挨拶の言葉に使っていたのです。
なので、2月4日より前の生まれの人は、干支も前の年のものが正しいということになります。
そもそも今のカレンダーは明治になって決まったもので、旧暦からも1か月くらいずれているくらいなので、本来の意味からは離れてしまっていて当然なのですが。
ちなみに節分に鬼を払うために豆を撒きますが、これは、2月が丑、3月が寅で、2月と3月の間は丑寅、つまり鬼門にあたるのためです。
節分が正月ということは、節分が年の切れ目になります。
切れ目からは邪気が入りやすいので、そういう危ない方向・時期が鬼門と呼ばれ、邪気を払うために豆をまくということになるんですね。
(なぜ1月ではなく2月と3月の間が正月なのかということは、黄道とか地軸の傾きとかが関係してきてややこしいので割愛。)
春には春の養生がありますが、冬のように簡単ではありません。
冬は寒さから身を守り、からだを温かく保つというのが基本です。
しかし春は気温も天気も変動しますので、からだは常に不安定な状態におかれます。
春は五行で肝が該当しますが、肝は陰中の陽ともいわれます。
陰(冬)の中から陽(春)に移っていく時期を意味しています。
一日の時間で言うと朝から午前中です。
つまり、陰から陽に変わっていく、陰と陽どちらの要素も併せ持つ、ということです。
このような不安定な状態は、からだにとってストレスになります。
陰から陽に移っていくということは、すべてのものが内から外に向かいます。
そのため、気持ちが昂りやすく、精神的に不安定さが増します。
木の芽時って言いますね。
このような時期なので、春はストレスをうまく発散し、肝の持つ外に発散していく性質を助けてあげるような養生を行います。
軽い運動や早起きをこころがけ、冬の寒さで固まったからだを少しずつほぐしていきます。
食事は、セリやセロリなど爽やかな香りのする食べ物や、ふきのとうや菜の花など、新芽を摂るのがよいですね。
山菜の新芽(わらびやふきのとうなど)は灰汁が強くて苦みがありますが、苦みは毒を排除する働きがあります。
この時期これらを食すのは、冬にためこんだ毒素をからだから取り除く意味もあります。
また、肝を養う(=血を増やす)ために良質なたんぱく質を摂るようにします。
味付けはさっぱりした感じがよいとされます。
まだまだ春の気配はしませんが、陽は長くなってきていますし、日差しも少しずつ強くなっていきます。
少し暖かくなってきたら朝ジョギングしてみようかな、など今のうちに春の養生プランを考えておくのもよいかもしれませんね。
更年期の不調はいろいろあります。
更年期障害は、閉経前後の約10年間に起こる、女性ホルモンバランスの変化にともなう不調をいいます。
女性ホルモンは卵巣から分泌されます。
その卵巣機能が年齢にともなって衰え、女性ホルモンが減っていって閉経にむかう時期がいわゆる更年期です。
しかし、この変化が大きすぎて、からだに負担がかかることで様々な症状がでてしまうことが、更年期”障害”といわれるものです。
更年期障害というと、ホットフラッシュといって、急に顔が熱くなったりのぼせたりする症状や、やたらに汗をかくとかを思いつくかもしれません。
しかし女性ホルモンの減少は全身に影響を与えるので、それも更年期障害なの!?という意外な症状もあります。
これは、女性ホルモンが代謝や内臓、神経機能などにかかわっているためで、それが急に減少することが様々な不調を引き起こすのです。
更年期の主な症状
自律神経系
ほてり、のぼせ、動悸、多汗、冷えなど
運動器系
関節痛や変形(五十肩やへバーデン結節など)、足がつる、激しい肩こりなど
内分泌系
ドライマウス(唾液の減少)、ドライアイ、皮膚のかゆみなど
消化器系
食欲増進または減少、胃腸の不調、便秘など
精神神経系
うつ、物忘れ、不眠、不安感など
これらの症状で、どれがどの程度で現れるのかは、とても個人差が大きいです。
なんなく更年期を過ごせる人もいれば、病院通いになってしまう人もいます。
自分に更年期の症状が出ていると気づかず、あちこち病院をわたりあるいてしまうこともあります。
婦人科の先生は、それは更年期の症状ですねと気が付きやすいですが、他の科ですとそこに思い当たらない場合も少なくないようです。
なので、50歳前後になって、今までにない体調の変化を感じたらまず婦人科でホルモン値を確認するのがよいかと思います。
女性ホルモン剤を服用することで、激しいホルモンバランスの変化をやわらげ、諸症状が緩和する場合もあります。
また、女性ホルモンが減少していくと、生理も変化していきます。
生理周期が短くなったりまたは不定期になったり、出血量が急に増えたり、生理前の不調が減少または増加したりします。
そういう傾向がみられたら、やはり婦人科で更年期に入ってきているのか診てもらうとよいと思います。
体調に変化がみられたときに、更年期だからかなと気づくことができれば治療に結びつきやすくなります。
この時期が過ぎれば楽になるだろうと放っておくと、よくないこともあります。
例えば、ドライマウスによって歯周病が加速したり、手の関節の動きが悪化してしまったりなどです。
これらは不可逆的な変化なので、更年期が過ぎたからといって治るわけではないのです。
鍼灸治療も更年期の不調には有効です。
継続的な治療により、更年期症状も軽く済む傾向にあります。
病院との治療と並行して行うこともできますので、からだにやさしい鍼灸を、ぜひ活用していただきたいと思います。
こたつとミカンの大事な関係。
こたつを使っている人はまだ少なからずいらっしゃるでしょうか。
今や生活はすっかり洋風ですが、居間にはこたつがあるというおうちもありますね。
独り暮らしの住まいだと、案外床にテーブルという組み合わせで過ごしていると、冬はこたつを使うかもしれない。
ニトリなんかみても、まだまだこたつは売れていそうな感じです。
こたつで足を温めると、温められた血液が体幹に戻ることで全身も温まります。
そのため、まわりの空気が寒くても、少し着込むことで温かく過ごせます。
エアコンと違ってからだがポカポカするので気持ちよいです。
「チコちゃんに叱られる!」で、こたつでウトウトするのはからだが冷えるから、ということをやっていました。
からだが温まると、今度は温まりすぎないよう、余分な熱を放出し始めるので深部体温が下がり、眠くなるという仕組みでした。
こたつに限らず、適度にからだが温まると眠くなるのはこの働きによるものです。
テレビでもいっていましたが、危ないのはここからです。
ウトウトしてそのまま寝てしまうと、熱を放出するために汗をかくので逆に冷えてしまって風邪を引いてしまいます。
風邪ですめばまだいいほうほうかもしれません。
冬は空気が乾燥しているので、汗をたくさんかいているという自覚があまりありません。
夏は湿度が高くて汗が蒸発しづらいので、肌や服がべたついて汗をかいていることがいやがおうにもわかります。
汗をかいている自覚がないということは、脱水に気がつかないということです。
さらに、冬は寒さもあり、あまり積極的に飲み物をとろうとする気持ちになりません。
そんな状態で寝込んでしまうと、脱水は加速します。
そうなると、めまいやからだのだるさなどの脱水症状が現れる可能性が出てきます。
血液濃度も上昇するので、脳梗塞などのリスクも高まります。
この危険から身を守ってくれるのが、ミカンなんですね。
こたつに入っていて喉が乾いたとき(=脱水)に、ミカンを食べてのどを潤す。
こたつとミカンはとても合理的で大事な組み合わせという訳なんです。
なお、こたつのはらむ危険性と同じものに、電気毛布があります。
就寝時に寒いからと、電気毛布を使うことはよくあると思いますが、脱水を防ぐため必ずタイマーをセットして眠った後に電気が切れるようにしましょう!
脱水症状に陥らなくても、風邪を引いたり、眠りも浅くなって疲労感が抜けなかったりします。
また、お酒を飲んでソファなどで寝入ってしまうのも同じ状態ですので、気を付けましょう。
お酒で温まったからだから熱が抜け、冷たい空気でからだが冷えますし、アルコールによる脱水作用もあります。
冬にからだを冷やさないよう、温めることはとても大事なんですが、脱水には気を付けたいですね。
乾布摩擦がいいかもしれない。肌をさする効果とは。
子どものころ、上半身裸になってタオルでからだをゴシゴシこする、乾布摩擦をやったことがある方も多いのではないでしょうか。
冬に注目されることが多いので、”寒風”摩擦と勘違いしている方もいるかもしれませんが、”乾布”です。
乾いた布で皮膚を擦るという健康法です。
科学的根拠に乏しいと考えられたのか、最近は幼稚園などでもあまり行われていないようです。
ですがこのところ、「ドライブラッシング」という、同じような健康法が流行っているようです。
ドライブラッシングは布ではなく、柔らかいブラシを使うようですが、皮膚刺激を目的としている点では確かに近いものがあります。
ドライブラッシングは美肌やむくみに効果ありとしていますが、皮膚刺激が健康によいとされているのは注目に値すると思います。
乾布摩擦などの皮膚への適度な刺激は、東洋医学的な視点から合理的な面があるからです。
経絡を整える
小児鍼という、子ども用の鍼があります。
この鍼の使い方は、子どものからだを経絡に沿ってなでさするものです。
子どもは大人より感受性が高いので、経穴に鍼をあてなくても、からだの表面に軽い刺激を与えるだけで経絡の流れが改善するんですね。
大人でも経絡は同じように流れていますので、からだの表面、つまり皮膚への刺激もある程度有効であると考えられます。
肺経を鍛えられる
皮膚をつかさどっているのは五臓の肺です。
皮膚を刺激することにより、肺経の気の流れが活発になり、からだを守る衛気の働きが増します。
風とか寒とかの外邪が侵入しづらくなるのです。
それにより不要な熱は発散され、必要な熱はからだをめぐるので、適度にからだが温まります。
風邪や喘息によい
肺経がしっかりして外邪がはいってこないということは、風邪をひきにくくなるということでもあります。
また、肺経はのどや鼻にも通じるので、喘息や花粉症の予防などにも効果が期待できると思います。
元気になる
落ち込むといった内因や、運動不足などで気のめぐりが悪くなっている時、乾布摩擦で気のめぐりをよくしてやると、気持ちも上向きになると考えられます。
肌に触れるということは、基本的に気持ちの良いことです。
他人はともかく、自分で自分の肌に触れることに抵抗がある人はいないと思いますので、肌を擦るのは嫌な気持ちには少なくともなりません。
不安な時、人は顔や手を触ります。
肌を触ることは、不安を和らげる効果があるかもしれないと思っています。
やり方
皮膚が鍛えられていない状態で、裸になってタオルでゴシゴシするのは風邪をひく危険があります。
ここは”乾布”にこだわらなくてもいいかと思います。
シャツなど薄い服の上から、さするようにさらさらと手のひらを滑らせるようにするとよいと思います。
胸元、腕、手、おなか、もも、足、背中はタオルを使って、あまり力を入れずに。
仕事の休み時間など短い時間でもできるので、いいですね。
寒いの?と聞かれてしまいそうですが。
最近いいかもしれないと思い始めたところなので、自分でも少し続けてみて、感触を確かめてみたいと思います。
鍼灸でニキビ治療!?
お肌に湿疹やできものなどができた時には、たいがいの場合皮膚科を受診すると思います。
その症状に合わせた塗り薬が処方されることが多いでしょう。
ステロイドの入ったものは炎症を抑えるので、効果も高いと思います。
ただし、なぜその皮膚の状態が悪くなってしまったのか、根本にアプローチするには足りない場合もあります。
便秘をした時に吹き出物が増えたり、食べ物にあたって蕁麻疹(じんましん)が出たりした経験がある方も多いと思います。
内臓の働きと肌の状態に関係があることは、経験的に納得がいくのではないでしょうか。
東洋医学では、皮膚を支配しているのは肺ですが、その原因を作るのは他の臓であることが多いと考えています。
肺の機能が弱まって熱の発散が悪く皮膚トラブルを招くことはありますが、熱の発散が悪くなるのは他の要因もあるからです。
特に脾の失調が、皮膚に影響することが多いです。
五行の相生関係においても、脾は肺の親にあたるので、親の不調は子にも影響が出やすくなります。
表題のニキビは、脾が虚しているのと同時に、様々な状態からおこります。
まず食べ過ぎて胃に熱がこもってる状態になると、ニキビができやすくなります。
食事をとると消化のため、胃が活発に働きますが、そのために胃は熱を必要とします。
また消化によって熱が作られもします。
必要以上に食べれば、その分働こうとしてますます熱を必要とし、また熱も発生します。
胃には熱が溜まりますが、食べ過ぎで疲弊するので、脾は虚します。
そうすると脾の気血津液を巡らす働きが弱まり、胃の熱がうまく発散できなくなります。
そうして皮膚で停滞した熱が、ニキビとなって表れるという訳です。
甘いものや脂っこいものなど、湿熱を溜めやすい食べ物も同じような流れでニキビの原因となります。
逆に胃腸が弱くて十分熱を発散する力がないことでもニキビができるときがあります。
また、瘀血がある場合でもニキビはできやすくなります。
瘀血によって血の流れが悪くなり、局所的に熱が停滞してニキビとなります。
若い女性に多いパターンで、便秘があったり、生理にトラブルを抱えていることが多いです。
ニキビは皮膚の常在菌が通常よりも繁殖して炎症が起こることで発生します。
普段は悪さをしない常在菌がなぜトラブルを引き起こすのか、その原因を探ることが根本的な治療に必要です。
皮膚を清潔にするのと同時に、食べ物や生活習慣など、からだ全体にかかわるところの見直しが大事になります。
ニキビにはりが効くというとピンとこないかもしれないですが、からだの状態を改善するという意味では、とても有効ではないかと思います。
どうして病気にかかるのか②内因
昨日は病気になる原因と、そのうちのひとつである外因について説明しました。
今日はもうひとつの原因である内因について書いていきたいと思います。
外因がからだの外側からの影響によるものであることに対し、内因は自身のからだの内側に原因があるものをいいます。
そして病気の原因としてからだの中の何が影響しているかというと、こころの動き、つまり心理的なものだというのです。
今でこそ、思い悩みすぎたりストレスを受けたりして体調が悪くなる状態を見る心療内科という分野がありますが、東洋医学では最初からこころとからだを分けて考えることはありませんでした。
こころの動きも、寒くて風邪をひいたり、働き過ぎて疲れたりするのと同じくらいからだに影響すると考えています。
内因は、怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の7つがあるとされ、これを七情といいます。
七情による性格の違いについては、以前も説明したことがありますね。
これらの感情は誰もが日々感じていることなので、これだけで病気になるというわけではありません。
外因が自然環境、季節の気候に過ぎないということと同じです。
しかしこの感情の度合いが過ぎると、からだに悪影響を及ぼすということなのです。
「怒」は肝の持つ自然な感情です。
肝は外や上に向かっていく性質があり、肝がよく働いている状態では積極的、外交的、徹底的な性格として現れます。
肝が弱ると優柔不断になるというお話は以前もしましたね↓
この性格が行き過ぎると、肝を傷めることになります。
例えば、締め切りに間に合わないから徹夜してでも終わらせるとか。
このように無理をし続けるとエネルギーである血をどんどん消耗していくので、肝が虚してしまいます。
肝虚証になると、もともとの肝の性格は過剰になります。
無理している状況でさらに頑張ろうとするわけですから、現実問題として無理が生じますので、うまくいかないことにイライラしたり、人を攻撃したりしてしまいます。
そしてそれらは肩こり、頭痛、不眠など肝虚証としての症状につながっていくのです。
「喜」は心の持つ自然な感情です。
心がきちんと働いている時は、心の陽気により、にこにこと温かい空気をまとった雰囲気になります。
これが過剰になると、心を傷めます。
例えば憧れの芸能人と会えた!と喜ぶあまり失神するなどです。
心は精神状態を管理しているので、そこが失調してしまうのです。
「思」は脾の持つ自然な感情です。
脾は五臓の中でも一番からだの奥にあり、考えをじっくりめぐらせて正しい行動がとれるようにしています。
脾がしっかりしていれば、考えもまとまり、記憶力が保てます。
それが思い悩みすぎると、脾を傷めてしまいます。
脾を傷めると気血津液の生成が悪くなり、からだに十分いきわたらなくなりますので、倦怠感、体が重い、うつ状態という脾虚証の病症を呈してくるようになります。
食欲もなくなって栄養も取り込めなくなるので、ますます脾虚が悪くなってしまいます。
「憂・悲」は肺の持つ自然な感情です。
肺の、冬に向かってからだを閉じていこうとする内側へ向かう性質を持っているのです。
一人の時間を大切にし、穏やかで静かな性格をつくります。
しかしつらいことがあったりして悲しみが過ぎると、肺を傷めます。
気のめぐりが悪くなり、行動しようとする気力がなくなってしまいます。
慢性的に咳き込んだり、風邪をひきやすくなる、つまりなんだか常にかからだが弱いような感じになります。
「恐・驚」は腎の持つ自然な感情です。
腎の持つ、なにかに備えておいたり、状況に応じて感情を抑えた行動をとったりといった、慎重で謙虚な性質を表しています。
腎がしっかりしていると、多少のことでは動じない、頼りがいのある感じの性格になります。
それが交通事故やパワハラなど、恐ろしい目に遭遇した経験があると、腎虚になりやすくなります。
腎の引き締める力が弱まるので、気持ちがしっかりせず常に不安でビクビクするようになります。
腎虚証になると動悸がするようになったり、肥満になりやすくなったりします。
このように、内因によって不調になることは案外身近に感じているかもしれません。
鍼灸治療では、虚してしまった臓を補い、もとの状態へ戻すように治療していきます。
どうして病気にかかるのか①外因
先日、インフルエンザの記事にて、感染症は疫癘と呼ばれる不内外因に分類される病因だと書きました。
その前に、病気の原因についての東洋医学的考え方についてきちんと書いていなかったなと思いましたので、今回はそれについて説明してみようと思います。
東洋医学では、病気の原因を
- 外因
- 内因
- 不内外因
の3つに分けています。
外因は、人間を取り巻く自然環境が原因のものです。
内因は、人間のからだのこころの動きに原因があるものです。
不内外因は、外因、内因どちらでもない原因をいいます。労倦(働き過ぎ)、房事過度、疫癘(感染症)、飲食不節、外傷などです。
さて、外因についてですが、外因は自然環境の変化にからだが悪影響を受けてなんらかの不調をきたします。
自然環境の変化とは、風・暑(火)・湿・燥・寒の6つで、六淫(りくいん)とも呼ばれます。
(六淫と呼ぶときは暑と火を分けていますが、一般には一緒に考えます。)
この5つ、見覚えがあるかもしれませんね。
風・暑・湿・燥・寒は五邪ともよばれ、春・夏・長夏(土用)・秋・冬の季節の気候と同じです。
つまり、夏の暑さや冬の寒さなどが原因で病気になるということです。
しかし、夏暑いからと言って、すべての人が病気になるわけではありません。
もともとからだにかたよりがあり、そこに外因が加わることで気血津液のいずれかが侵されて病気になります。
五邪といいつつも、健康な人にとっては邪にはならないわけで、季節の変化で病気になる人とならない人がいる、ということになります。
からだのかたよりとは、もともとの体質、年齢、疲れ、産後など様々な要因があります。
とはいえ、まったくかたよりがなく完璧な人は存在しませんので、程度問題ということになります。
例えばもともと脾虚タイプの人は、湿度の高い梅雨の時期などに倦怠感や頭痛などがでやすくなります。
肺虚タイプの人は、空気が乾燥してくる秋に、のどを傷めやすいです。
そして少し複雑になりますが、肝・心・脾・肺・腎の五臓はその関連する邪だけでなく、すべての邪から影響を受けます。
例えば湿邪は脾を傷りやすいとはいえ、脾だけが病むとは限らない、ということです。
これは五行の関係性により、病の出方の強弱を考えることができます。
風(肝と同じカテゴリの邪)で見てみましょう。
風→肝=五行が同じで正邪と言います。(まあまあ。治療しやすい)
風→心=心は相生関係で肝の子で、虚邪と言います。(あまりよくない)
風→脾=脾は相剋関係で肝から尅される側になり、賊邪と言います。(一番ひどい)
風→肺=肺は相克関係で肝を尅す側なので、微邪と言います。(一番軽い)
風→腎=腎は相生関係で肝の親で、実邪と言います。(そんなにひどくない)
結局、外因がなんであれ病んでいる臓を治療しないといけないわけですが、その時にその邪に関する臓の経穴を用いたりなど、関係性がわかっているとそれを治療に活かすことができます。
どんな外因がどの臓をどれくらい侵しているか、もともとのかたよりはどれほどか、などの見極めが効果的な治療に結びつくわけですが、これをどれだけ正確に弁えることができるようになるかが、鍼灸師の終わりなき課題だともいえますね。。